Wistar系雄性ラットを全身麻酔し、上位胸髄に錘による荷重を加え脊髄損傷モデルラットを作成した。脊髄運動誘発電位および体性感覚誘発電位を、損傷時から回復期にかけて経時的に評価した。脊髄損傷時、脊髄運動誘発電位および体性感覚誘発電位は完全に消失した。また、錘(10g、20g)の程度および荷重時間が増加するほど、超急性期のBasso Beattie Bresnahan(BBB)スコアは低値を示した。IL-6レセプター抗体の投与は電位の回復に至らなかった。一方、エダラボン(3 mg/kg/h)群は 60%、メチルプレドニゾロン群は 5%、生食群は 2%程の脊髄運動誘発電位の振幅の回復が認められた。すなわち、メチルプレドニゾロンと比較してエダラボンの有意な電位の回復は、臨床における脊髄損傷の回復にエダラボンは有用である可能性が示唆された。次に、投与時期の検討を行ったところ、脊髄損傷30分前エダラボン投与開始群は損傷後エダラボン投与開始群より電位の回復が高まった。さらに、投与量の検討を行ったところ、エダラボン(3 mg/kg/h)群は 60%の回復が認められたのに対し、エダラボン(1 mg/kg/h)群は 20%程度の回復にとどまった。脊髄運動誘発電位は急峻なピークを有する電位の回復であったが、体性感覚誘発電位は緩徐なピークにとどまった。 エダラボンはフリーラジカルの消去によって脊髄損傷の増悪を抑制し脊髄機能の再生効果を有する可能性があり、臨床においてエダラボンはステロイド大量療法に代わる超急性期脊髄損傷の新しい予防薬 ・治療薬として期待される。
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