研究課題/領域番号 |
23592281
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
池野 重雄 信州大学, 医学部, 委嘱講師 (60265270)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 末梢神経麻痺 / ニューロメーター / ペインビジョン |
研究概要 |
臨床データの収集を主として以下の2項目につき実施している。第1に、硬膜外鎮痛法による術後の神経機能の変化を調査している。人工膝関節手術や股関節手術を受ける患者を対象として調査を行っている。手術前日に、ニューロメーターを用いて、神経線維ごとの機能を測定する。術後に関しては、硬膜外麻酔そのものによる神経ブロック効果が消失してから12時間後、24時間後および48時間後に調査を行う。手術侵襲による影響を除外するために、手術側の反対側で測定を行っている。第2に、静脈血栓塞栓予防装置による神経機能の変化の評価を上腹部手術を受ける患者を中心に測定している。手術前日に、ニューロメーターを用いて、神経線維ごとの機能を測定する。測定部位は、腓骨神経領域とする。血栓予防装置ごとの神経機能に与える影響を調査する。これらの測定結果を収集するとともに、術後神経麻痺発生状況についての調査を行っているが、術後神経麻痺の発生頻度が低いために測定値と麻痺の発生との因果関係を解析するにはさらなる症例の蓄積が必要である。ニューロメーターによる神経機能(知覚機能)の測定とペインビジョンによる最小感知電流の測定との関連性の調査をボランティアを対象に行っている。ペインビジョンによる最小感知電流の測定を行い、Aβ線維の知覚域値との相関を求める。この結果から、Aβ線維の知覚域値をペインビジョンによる最小感知電流の測定で代用できるか否かを調査している。動物実験では、神経機能の測定としてのEPF法(Electrical stimulation-induced Paw Flexion) EPW法(Electrical stimulation-induced Paw Withdrawal)の2種類のテストを実施するための予備実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験がやや遅れ気味が、その理由は、臨床研究をより進めたためであり、全体としてはおおむね順調に進展していると思われる。硬膜外鎮痛法による術後の神経機能の変化および静脈血栓塞栓予防装置による神経機能の変化の評価に関しては、症例の収集が進んでいるものの、術後神経障害の発生は稀であり、因果関係を発見するには至っていない。地道に症例を蓄積することが重要と思われる。ニューロメーターによる神経機能(知覚機能)の測定とペインビジョンによる最小感知電流の測定との関連性の調査をボランティアを対象に行っている。こちらも、症例の蓄積が必要である。動物実験では、神経機能の測定としてのEPF法(Electrical stimulation-induced Paw Flexion) EPW法(Electrical stimulation-induced Paw Withdrawal)の2種類のテストを実施するための予備実験を行っており、これらのテストを行うことが近日中に可能になると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
術後患者の周術期神経機能の変化の調査については、引き続き平成23年度と同様に行う。平成24年度中に、ニューロメーターによるによるAβ線維の神経機能測定がペインビジョンによる最小知覚域値の測定で代用できることが判明した場合は、Aβ線維の神経機能測定に限り、ニューロメーターによる測定のかわりにペインビジョンを用いてこれに替える。ペインビジョンによるAβ線維の神経機能の評価については、平成24年度中にも引き続き若干のデータ収集が必要なため、継続して実施する。動物実験:ラットを用いた神経ブロック後の神経機能測定:神経ブロック方法は、セボフルランを用いた全身麻酔を行い、全身麻酔下に大腿神経ブロックを実施する。神経ブロックは臨床で神経ブロックの際用いられる2%リドカインに加え、4%、8%の高濃度リドカインを用いる。神経機能の測定は、神経機能の測定としてのEPF法(Electrical stimulation-induced Paw Flexion) EPW法(Electrical stimulation-induced Paw Withdrawal)の2種類のテストを用いる。この測定は、神経ブロック前、神経ブロック24時間後、48時間後および72時間後に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度には、臨床研究の方がより順調であり、動物実験がやや遅れ気味であった。全体としてのエフォートは、計画の通りであったものの、臨床研究にと動物実験のバランスは、臨床研究優位に進んだ。そのため、動物実験用の薬剤や物品購入が当初計画より少額となり次年度使用額が生じた。24年度は、動物実験を優位に研究を進めるため、23年度の物品購入費等を24年度に使用して、23年度の動物実験の不足を回復する予定である。
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