研究概要 |
硬膜外麻酔および神経ブロックを用いた術後疼痛管理や、周術期の静脈血栓塞栓症の予防処置としての弾性ストッキングの着用および間歇的空気圧迫法は、末梢神経障害の一因となりうる。この神経障害の危険因子を調査するため、上記の鎮痛法および血栓予防装置による神経機能の変化の評価に関して、ニューロメーターを用いた調査を行ってきた。しかし、術後神経障害の発生は稀であり、神経障害と原因の因果関係の発見のために膨大なデータ収集を行わなければならない。一方で、ニューロメーターは、測定に時間を要し、被験者の負担は軽くない。効率よくデータ収集するためには、被験者の負担を減らして協力を得やすくすることと神経機能の測定時間を短くする必要があり、この目的でペインビジョンを活用することが必要となった。ボランティアを対象に、ニューロメーターでは Aβ, AδおよびC 線維の電流刺激閾値を測定し,ペインビジョンでは被検者の電気刺激に対する閾値(最小感知電流)を測定し、測定値の相関を検討した。その結果、Aβ線維およびAδ線維に対応する電流刺激閾値とペインビジョンの最小感知電流にはそれぞれ高い相関が認められた。(R2= 0.41, 0.33)C線維に対応する電流刺激閾値と最小感知電流には相関がなかった。このことから、ニューロメーターによるAβ線維およびAδ線維の知覚機能測定は、ペインビジョンで行うことが可能となり、今後、データの収集の大幅な効率化が見込まれる。 この評価方法は、非常に簡便かつ低侵襲であり、広い分野で多くの神経障害の評価を効率化できる画期的な方法と思われる。 ラットを用いた末梢神経障害の評価に関しては、原因の鑑別が一部困難であるが、EPF法およびEPW法による評価が開始可能となった。
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