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2012 年度 実施状況報告書

非侵襲的脳内グルタミン酸、GABA測定による痛みの脳機能評価法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 23592284
研究機関滋賀医科大学

研究代表者

福井 聖  滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80303783)

キーワードMR spectroscopy / 前帯状回 / NAA / GABA / Glutamate / 慢性痛 / VBM / 局所脳神経機能
研究概要

罹患期間6ヶ月以上の慢性痛患者24人(35歳~75歳,女性16人,男性8;慢性腰痛13,複合性局所疼痛症候群(CRPS)5,頸部痛2,線維筋痛症1,糖尿病性神経障害性痛1,帯状疱疹後神経痛1,慢性頭痛1)を対象に、24人の年齢、性別が相関する健常被験者を対照群とし、前帯状回におけるGABA濃度、グルタミン酸(Glu)濃度、およびNAA濃度を3T MR装置を用いて測定した。T2強調画像上の前帯状回領域で得られた磁気共鳴スペクトルをLC model、Mega‐Press法を用いて解析した。
またMRS測定時に、同時にVBM(Voxel-based morphometry)を施行した。VBM は3T MRI装置で、SPM8を用いてDARTEL法による解析を行い、各年代89人~118人の健常人で得られた正常値と比較した。
慢性疼痛患者では、健常被験者と比べ、NAA濃度および GABA濃度が有意に低下していた。さらに、NAA濃度が低下するほどGABA濃度が低下する傾向を認めた。一方、グルタミン酸濃度は両群間で有意差がみられなかった。慢性疼痛患者で心理療法を必要とした75%の患者で、1H-MRSで、前帯状回でNAA濃度の低下を認めた。
心理療法を必要とした慢性疼痛患者では、VBMで扁桃体(Amygdala),島,海馬傍回, 吻側前帯状回(BA32)など痛みに伴う情動、認知に関連する領域、眼窩前頭皮質,側坐核(Nac)などドーパミン鎮痛系抑性系に関連する領域で灰白質密度の低下を認めた。
慢性疼痛患者における前帯状回のNAA 濃度およびGABA濃度の低下は、抑制性の神経伝達効率の低下が生じている可能性を意味し、慢性疼痛の病態成立に関与する可能性が示唆された。
1H-MRS,VBMは、慢性痛患者の非侵襲的かつ客観的な評価手段、治療法選択の指標になりえる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前帯状回領域において3T MRI装置を用いて、磁気共鳴スペクトルをLC model、Mega‐Press法を用いて解析することで、 1.5TMRI装置では測定不可能な、GABA濃度、グルタミン酸濃度の測定が可能 になった。慢性疼痛患者では、健常群と比較して、有意にGABA濃度及びNAA濃度が低下していたことから、慢性疼痛では、前帯状回における抑制系の神経機能低下が病態の成立や遷延化に関与する可能性があると考えられる。
MRSは、実際の臨床現場で患者にタスクをかけることなく、脳内の神経伝達物質濃度を測定できるので、慢性の痛みの客観的な評価法として臨床応用できる可能性がある。 また治療前後で測定により、治療成果を判定できる評価法として、さらに発展していく可能性があると考えられる。

今後の研究の推進方策

慢性痛患者では、健常群と比較して、有意にGABA濃度及びNAA濃度が低下していたことから、慢性痛では、前帯状回における抑制系の神経機能低下が病態の成立や遷延化に関与する可能性があると考えられる。MRSは、患者にタスクをかけることなく、脳内の神経伝達物質濃度を測定できるので、慢性の痛みの客観的な評価法として実際の臨床現場で臨床応用できるか検討していく。 また治療前後で測定し、治療成果を判定できる評価法になりえるか検討していく。
MRS 測定時に、同時にVBM(voxel-based morphometry)で前帯状回、島、視床、海馬、扁桃体、海馬傍回、等の局所脳の委縮状態、形態学的状態を測定できるように設定したので、今後は両者の結果を合わせて評価していく予定である。

次年度の研究費の使用計画

前年度の成果を国内外の学会に発表し、国際雑誌に投稿するための経費に使用していく。
さらに研究をすすめていくために、MR医学、統計学に精通した研究補助者の謝金に使用していく。またMRSと同時にVBM(voxel-based morphometry)で脳全体の局所脳(前帯状回、島、視床、海馬、扁桃体、海馬傍回、等)の委縮状態を短時間で測定できるような解析ソフトの開発経費、そのためのコンピューター購入経費に使用し、今後は両者の結果を合わせて評価していく予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] H-MR Spectroscopy of the Anterior Cingulated Cortex: Usefulness in the Prediction of Patients That Will Benefit from a Cognitive Behavioural Therapy in the Treatment of Chronic Pain.2013

    • 著者名/発表者名
      Sei Fukui, Masahiro Yoshimura, Katsunori Miyata, et al.
    • 雑誌名

      Open Journal of Medical Imaging

      巻: 3 ページ: 12-16

    • DOI

      10.4236/ojmi.2013.

    • 査読あり
  • [学会発表] 核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を用いた慢性疼痛患者の局所脳機能評価

    • 著者名/発表者名
      福井 聖, 岩下 成人, 新田 一仁, 他、
    • 学会等名
      第34回日本疼痛学会
    • 発表場所
      国際交流会館、熊本
  • [学会発表] Voxel-based morphometryを用いた慢性腰痛患者の局所脳機能評価の試み

    • 著者名/発表者名
      福井 聖, 岩下 成人, 新田 一仁, 他、
    • 学会等名
      第34回日本疼痛学会
    • 発表場所
      国際交流会館、熊本
  • [学会発表] 慢性疼痛患者の前帯状回におけるγ-アミノ酪酸とグルタミン酸―MRスペクトロスコピーを用いて

    • 著者名/発表者名
      岩下 成人, 福井 聖, 新田 一仁, 他
    • 学会等名
      第34回日本疼痛学会
    • 発表場所
      国際交流会館、熊本
  • [学会発表] 慢性腰痛患者のVoxel-based morphometry、プロトン核磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた局所脳機能評価

    • 著者名/発表者名
      新田 一仁, 福井 聖, 岩下 成人,他
    • 学会等名
      第20回日本腰痛学会
    • 発表場所
      国際会議場、神戸

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公開日: 2014-07-24  

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