本研究では虚血・再潅流によるアポトーシスの指標がオンコーシスと同様にマイクロダイアリシス法で検知できる実験モデルを開発し、アポトーシスとオンコーシスを経時的に測定することにより麻酔薬の両傷害機構に対する修飾の違いを検証したいと考えている。心筋虚血によるアポトーシスがマイクロダイアリシス法によって測定できるかどうかについて30分間の冠動脈閉塞とその開放後60分間のラット心筋の透析液中からアポトーシスの指標であるヌクレオソームとシトクロムCの濃度を測定した。ヌクレオソームにおいては回収率が低いためか、あるいは感度が低いためか、まったく実測できなかった。一方、シトクロムC濃度は冠動脈閉塞中の上昇は認められなかったが、再灌流45分以後において僅かに上昇が認められた。そこで本年度はシトクロムC濃度測定に標的を絞り、透析液の灌流速度を遅くし、サンプリング時間を長くして回収率と回収総量を増やして行った。また、虚血強度も60分間の冠動脈閉塞操作に変更してアポトーシス誘導の増強を行った。その結果、虚血中のシトクロムC濃度上昇は認められなかったが、再灌流時後半において上昇が認められた。よって心筋透析液中のシトクロムC濃度応答により虚血再灌流時のオンコ-シスおよびアポトーシスの程度が推測可能となり、心筋傷害の経時的生体傷害モニタリングの確立に一歩近づいたと考えられた。今後は、サイトカインや薬剤などによる虚血再灌流とは別機序でアポトーシス誘導を行い、その透析液濃度応答によるモニタリングの確証を得るべく準備を進めているところである。
|