研究課題/領域番号 |
23592291
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安田 季道 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20432718)
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研究分担者 |
河本 昌志 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40127642)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 悪性高熱症 / 先天性筋疾患 / リアノジン受容体 / 遺伝子変異 |
研究概要 |
日本人の悪性高熱症素因者(MHS)のリアノジン受容体(RYR1)から4894番目のアラニンからスレオニンへの変異が報告されている.一方,同部位のアラニンからプロリンへの変異が先天性筋疾患であるcongenital neuromuscular disease with uniform type 1 fiber (CNMDU1)患者のRYR1から発見されている.われわれはこの部位のアミノ酸変異が細胞内のカルシウム動態にどのような影響を及ぼしているかを確認するために,RYR1の存在しない細胞(HEK293細胞)に,wild type のRYR1及び遺伝子変異の入ったRYR1をそれぞれ遺伝子導入した.結果は,MHSから報告されたアミノ酸変異はRYR1のアゴニストであるカフェインに対する感受性が亢進しており,悪性高熱症(MH)の原因となることが確認された.一方,CNMDU1患者から報告されたアミノ酸変異はカフェインにほとんど反応しなくなった.このことより,CNMDU1患者に見られたアミノ酸変異がMHの原因とはならないことが確認できた.これらのことを論文にまとめて報告した(Haraki T: Anesth Analg. 2011 Dec;113(6):1461-7. ).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年は,5月から7月までの3ヶ月間,スイスのバーゼル大学病院において研究を行った.研究内容は,リアノジン受容体の近傍に存在するJP-45 の遺伝子多型に関するもので,この多型の頻度が悪性高熱素因者と非素因者の間で違いがあるかを確認すること及びその遺伝子多型が細胞内カルシウム動態に変化をもたらすのかを確認することであった.スイスでの研究は,当初,この研究計画を作成する段階では予定されていなかったことであり,これにより当初予定していた計画が一部遂行する時間が確保できなかった.また,私は麻酔科医であるが,近年,手術件数の増加に伴い臨床業務が急激に増加してきているために研究に時間を割くことが難しくなってきている.このことがもう一つの大きな理由であることは間違いない.
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今後の研究の推進方策 |
われわれは以前,RYR1の2508番目のアミノ酸変異がMHの原因となることを報告した(Migita T: J Anesth. 2009;23(3):341-6.).この変異が確認された症例は先天性筋疾患の一つであるセントラルコア病を発症している.この結果及び今回の結果からRYR1にアミノ酸変異を有している先天性筋疾患において,MHを発症しうる症例および発症しない症例が存在することを確認できた.過去の報告においても(Wu S: Brain. 2006 Jun;129:1470-80.),MHを発症している先天性筋疾患の症例のリアノジン受容体遺伝子変異はすべてC末端以外の部位に存在しており, RYR1のC末端にアミノ酸変異を有している先天性疾患はMHを発症しない可能性が高まった.セントラルコア病の患者から発見された変異のうちC末端に存在する変異の多くはMHを発症するか否かが確認されていない.これらの変異がMHを発症しうるかはできるだけ早急に確認していかなくてはいけないと考えている.また,われわれが検討した2508番目のアミノ酸はさまざまなアミノ酸への変異が報告されている.その中には,我々がまだMHの原因となることを確認していないアミノ酸変異が存在するので,今年度はこれらの変異に関する実験を行う予定である.その上で4894 番目のアミノ酸変異に対して行ったように,今まで報告されていないアミノ酸変異を人工的に作成し,4894番目のアミノ酸変異での実験結果と比較していきたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年までと同様に,様々な部位にアミノ酸変異が生じているリアノジン受容体を細胞に発現させるプラスミドベクターを作成する.それをHEK293 細胞に遺伝子導入し,カルシウム動態の変動を観察するために使用する.それに加えて,今年度も機器の維持にも使用することになると思われる.
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