研究課題/領域番号 |
23592291
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安田 季道 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 助教 (20432718)
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研究分担者 |
河本 昌志 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (40127642)
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キーワード | 悪性高熱症 / リアノジン受容体 / 先天性筋疾患 / 遺伝子変異 |
研究概要 |
一昨年度から行なってきたJP-45に関する研究で一定の結果が得られたので論文の作成を行った(Hum Mutat. 2013 Jan;34(1):184-90.).JP-45のc.323C>T(p.P108L)およびc.449G>C(p.G150A)の遺伝子多型の発現率は,悪性高熱症素因者と非素因者でほぼ同程度であった.しかし,これらの遺伝子多型が存在しているJP-45の機能解析を行ったところ,これらの遺伝子多型が存在するとジヒドロピリジン受容体のKClに対する反応を低下させることがわかった.リアノジン受容体に同じ遺伝子変異を有している悪性高熱素因者であっても臨床症状に大きな違いがみられることがある.今回の結果は,リアノジン受容体以外のタンパク質のアミノ酸変異が悪性高熱症及び先天性筋疾患の臨床症状の違いに大きく関与している可能性を示唆している.悪性高熱症を発症する可能性があるリアノジン受容体の遺伝子変異を保持していても今回報告した遺伝子多型がJP-45に存在している場合,悪性高熱症の臨床症状が減弱あるいは起こらなくなる可能性がある.これらの遺伝子多型と悪性高熱症および先天性筋疾患の病態への影響に関しては更に研究していく必要がある. 様々な部位のリアノジン受容体の遺伝子変異が細胞内カルシウム動態にどのような影響をおよぼすかについての実験は,あまり大きな進展は見られていない.日本人の悪性高熱症素因者から最も変異が確認されている2508番目のアミノ酸変異に関しては,悪性高熱症を発症する可能性が確認されている変異に加えて新たな変異が入ったリアノジン受容体を作成したが,確固たるデータを得るまでには至らなかった.先天性筋疾患で見られるC末端の遺伝子変異に関しては変異の導入が成功しなかったので新たなデータは得られていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,悪性高熱症及び先天性筋疾患の患者から発見されたリアノジン受容体の遺伝子変異に関する研究を行う予定であったが,バーゼル大学への短期留学を契機にして,JP-45がこれらの病態に関与している可能性を探求することができた.このことは,JP-45を含めた筋細胞内のカルシウム調節に関わっている多くのタンパク質に存在する遺伝子多型が悪性高熱症及び先天性筋疾患の病態に関与している可能性を示唆しており,当初の予定を逸脱しているが,大変有意義な成果ではないかと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,悪性高熱症素因者に最も多く確認される2508番目のアミノ酸変異について,実験を行なってデータを解析する.次に,先天性筋疾患患者から発見されているリアノジン受容体のC末端側の遺伝子変異に関して,実験を行い,この部位の遺伝子変異を持った先天性筋疾患患者では悪性高熱症を発症する可能性が低いということを実験的に証明して行きたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
一昨年に研究をさせていただいたバーゼル大学において2013年5月にEuropean malignant hyperthermia groupの年次集会が開催される.この年次集会に参加し,現在の研究状況について情報交換を行う予定である.他の研究施設からも興味深い発表がなされるものと思われるのでこれらの情報を一挙に得られるものと期待している.この後,リアノジン受容体のC末端側の遺伝子変異を中心として,今までと同様に実験を行なっていくために研究費を使用していく予定である.
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