研究課題/領域番号 |
23592293
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
白神 豪太郎 香川大学, 医学部, 教授 (20235740)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 手術後回復 / 麻酔後回復 / 機能的健康状態 / 麻酔後合併症 / 術後鎮痛 / 区域麻酔 / 心拍変動 / 聴覚誘発電位 |
研究概要 |
1)機能的健康状態回復に及ぼす影響の比較検討 回復指標の一つとして術後痛強度を客観的に測定できる指標としてPainVisionが有用であるかどうかについて,健常ボランティアを用いて検討した。被験者に対する説明方法によってPainVision測定値が変動する可能性があること,PainVision測定値には被験者の経験の有無によらず再現性があることを明らかにした。冠動脈バイパス術における早期抜管を意図する麻酔管理方法はICU滞在期間を短縮させる可能性があることを明らかとした。単顆人工膝関節置換術において,大腿神経ブロックは術中交感神経活動を抑制すること,夜間一過性低酸素血症の発生を抑制することを明らかとした。本邦麻酔科認定病院における日帰り麻酔の現況についてアンケート調査を行い,多くの施設で回復指標の基準がないことを明らかとした。電気痙攣療法において,症例を選べば,重篤な合併症なく日帰り可能とであることを明らかとした。乳癌手術において,胸部傍脊椎ブロック(PVB)併用monitored anesthesia care (MAC)はPVB併用全身麻酔よりも麻酔後回復が早いことを明らかにした。2)麻酔薬投与自動制御システムの開発 プロポフォールの鎮静度指標としてのaepEXについての基礎的臨床データを蓄積した。得られたデータを用いて,aepEXと推定作用部位麻酔薬濃度とaepEXに関しての薬動力学パラメータを組み込んだ数学的モデルを構築した。モデル予測制御法を用いて,aepEXを用いてプロポフォール麻酔状態を維持できる最小麻酔薬濃度を推定し,最小濃度+0.3μg/mLを目標として制御システムを構成した。このシステムを用いたシミュレーションにより,最小麻酔薬濃度推定および鎮静度制御がほぼ適切に行えることを確認した。さらに,BISのデータ,揮発性麻酔薬のデータ等を蓄積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)機能的健康状態回復に及ぼす影響の比較検討 データ蓄積がやや遅れている。研究助成金の交付が少し遅れたため,データ収集解析ソフトの購入が少し遅れた。また,手術室に新システム(フィリップス社製ORSIS)が導入されたが,導入当初システムが不安定であり,安定して蓄積データ(30秒毎)が取得できるようになるまで,かなり時間の時間を要した。2)麻酔薬投与自動制御システムの開発 データ蓄積が遅れている。麻酔中の生理的データ(血圧,心電図,BIS, aepEXなど)は,以前より麻酔モニターのアウトプットより2秒毎のデータをパソコンに落としてきた。自動制御システムには生理的データのリアルタイム取得,リアルタイム解析が必須であり,また解析のためには細かいデータ取得が必須であり,30秒毎のような粗いサイクルは不適である。当該年度において,手術室に新システム(フィリップス社製ORSIS)を導入したが,データアウトプットがORSISと競合するため,その調整に手間取り,半年以上にわたってデータ取得が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)機能的健康状態回復に及ぼす影響の比較検討 平成23年度に得られた結果を基にして,引き続き研究を継続する。特に、局所麻酔薬効果を延長するために局所麻酔薬持続投与を行い,単回投与法と持続投与法との違いについて検討する。術後回復および術後鎮痛やPONVなどの術後合併症に及ぼす影響について、局所麻酔薬持続投与による鎮痛方法とオピオイドを中心とする術後鎮痛法との比較検討を行う。2)麻酔薬投与自動制御システムの開発 aepEXを麻酔深度指標とするプロポフォール自動投与システムの臨床応用を目指す。平成23年度に引き続き上記の研究を継続し検討する。当該年度は,aepEXを麻酔深度指標とするプロポフォール自動投与システムの臨床応用を目指す。揮発性麻酔薬(セボフルラン、デスフルラン),レミフェンタニル,ロクロニウム等の投与を自動制御で行うことを目指して、数学的モデル構築のための基礎データを蓄積する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度においては,上記のごとく症例データ蓄積の遅れが生じ,消耗品等の消費が少なかったため,繰越金が発生した。次年度以降でデータ取得に要する消耗品を購入する。また,データ蓄積や解析,報告書作成,麻酔薬自動制御システムの臨床応用用など,これまで使用してきた既存のコンピュータ,その付属品や解析ソフト等の消耗品が旧式化しているため更新する。
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