研究課題/領域番号 |
23592293
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
白神 豪太郎 香川大学, 医学部, 教授 (20235740)
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キーワード | 手術後回復 / 麻酔後回復 / 機能的健康状態 / 麻酔後合併症 / 術後鎮痛 / 区域麻酔 / 心拍変動 / 聴覚誘発電位 |
研究概要 |
1)機能的健康状態回復に及ぼす影響の比較検討 上腹部手術患者において,持続肋骨弓下腹横筋膜面ブロックと単回投与ブロックとの術後痛に及ぼす影響の予備的検討を行った:持続ブロックは単回投与ブロックに比べ,術後1日目の体動時痛を有意に抑制した。単顆人工膝関節手術患者において,持続大腿神経ブロックと単回投与大腿神経ブロックとの膝関節機能回復に及ぼす影響を比較した:持続ブロックは単回投与ブロックに比べ,手術当日夜および手術翌日の創部痛強度が低く,膝関節可動域および他動屈曲開始角度が大きく,90度自動屈曲所用日数が短かった。婦人科単純子宮全摘術後患者において,フェンタニル単独IV-PCAとケタミン付加フェンタニルIV-PCAとの術後痛およびオピオイド関連不快症状(PONV,めまい,掻痒感)発症頻度に及ぼす影響の予備的検討を行った:ケタミン付加IV-PCAはフェンタニル単独IV-PCAに比べ,術後フェンタニル使用量を抑制したが,術後痛強度,PONV・めまい・掻痒感発症頻度には有意差がなかった。 2)麻酔薬投与自動制御システムの開発 プロポフォール,セボフルラン,デスフルランの鎮静度指標としてのaepEXおよびBISについての基礎的臨床データを蓄積した。得られたデータを用いて,aepEXと推定効果部位麻酔薬濃度とaepEXに関しての薬動力学パラメータを組み込んだ数学的モデルを構築した。推定効果部位プロポフォール濃度とaepEX実測値から麻酔維持に要する最小効果部位濃度を推定しその経時的変化を検討したところ,手術時間経過とともに推定最小効果部位濃度が増加した:これは手術中の薬物動態モデルが一定であるとの仮定のもとでは,手術経過とともにプロポフォールに対する応答性が変化し,麻酔維持に要する効果部位濃度が増加することを示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)機能的健康状態回復に及ぼす影響の比較検討 データ蓄積がやや遅れている。当該前年度に手術室新システム(フィリップス社製ORSIS)を導入したが,当初のシステム不安定で,安定したデータ(30秒毎)を取得できるまでに時間を要した。さらに,申請者の病院再開発に係わる管理者としての業務増大により臨床研究に割ける時間が減少した。 2)麻酔薬投与自動制御システムの開発 データ蓄積が遅れている。麻酔中の生理的データ(血圧,心電図,BIS, aepEXなど)は,以前より麻酔モニターのアウトプットより2秒毎のデータをパソコンに落としてきた。自動制御システムには生理的データのリアルタイム取得,リアルタイム解析が必須であり,また解析のためには細かいデータ取得が必須であり,30秒毎のような粗いサイクルは不適である。当該前年度において,手術室に新システム(フィリップス社製ORSIS)を導入したが,データアウトプットがORSISと競合するため,その調整に手間取り,半年以上にわたってデータ取得が行えなかった。また,当該年度にはORSISからのデスフルランのデータ取得のための調整に手間取った。aepEX電極の製造工程の障害で不良電極が多数生じ,電極不足におちいった。
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今後の研究の推進方策 |
1)機能的健康状態回復に及ぼす影響の比較検討 平成24年度に得られた結果を基にして,引き続き研究を継続する。 2)麻酔薬投与自動制御システムの開発 平成24年度に引き続き上記の研究を継続し検討、aepEXを麻酔深度指標とするプロポフォール自動投与システムの臨床応用を目指す。揮発性麻酔薬(セボフルラン,デスフルラン),レミフェンタニル,ロクロニウム等の投与を自動制で行うことを目指して,数学的モデル構築のための基礎データを蓄積する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度および当該前年度において,上記のごとく症例データ蓄積の遅れが生じ,消耗品等の消費が少なかったため,繰越金が発生した。今年度、データ取得に要する消耗品を購入する。データ蓄積や解析,報告書作成,麻酔薬自動制御システムの臨床応用などに使用してきた解析ソフト等の消耗品が旧式化しているため更新する。研究成果報告のための学会出張旅費や報告諸作成費などを支出する。
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