研究課題/領域番号 |
23592296
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
外 須美夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60150447)
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研究分担者 |
鄭 忠和 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10163891)
山浦 健 九州大学, 大学病院, 准教授 (70264041)
塩川 浩輝 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30572490)
大庭 由宇吾 九州大学, 大学病院, 助教 (30567368)
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キーワード | 疼痛治療 / 神経障害性疼痛 / 和温療法 / ペインクリニック |
研究概要 |
本研究は、和温療法の疼痛治療における効果を検討するものである。疼痛の中でも難治性といわれる神経障害性疼痛の患者を対象にし ている。これまで神経障害性疼痛に対しては、様々な治療が行われているが、効果も一定でなく、依然として治療法は確立されていな い。一方、和温療法は、加温により全身血流を改善し、サイトカイン軽減効果や神経伝導改善効果などにより、疼痛を改善させる方法であり、治療抵抗性の難治性疾患でそ の有効性が多数報告されている。当施設ペインクリニックに装備された「和温療法器」を用いて、難治性疼痛患者への和温療法を試みた。九州大学病院ペインクリニック受診患者 のうち、4ヶ月以上疼痛を有し、薬物治療や神経ブロック治療などで十分な治療効果を得られない慢性疼痛患者に対して、治療法の内容を説明し、同意を得た患者に和温療法を実施した。内訳は、線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群、外傷性神経障害性疼痛の患者であった。これまでの観察期間は最大15ヶ月であるが、疼痛スコアーの比較では、不変6例、やや 改善1例である。和温療法による副作用、有害事象は発生していない。これまでの成果からすると、和温療法単独による難治性慢性疼痛患者への有効性は否定的である。患者は、和温療法を希望され、治療後の痛みの軽減は得られるものの、長期的な改善効果は単独では得られないと判定された。これには、難治性慢性疼痛患者が抱えている心理的因子の比重が大きく、このような患者へは、和温療法のようなサポート治療は、一時的疼痛軽減には効果があっても、他の因子の影響が大きいため、本質的な疼痛軽減までは至らないと考えられる。そこで、疼痛軽減効果を上げるために、漢方薬の併用、および貼付薬や貼付パッチを使用し、効果を検討した。現時点では個別の患者では効果を上げているものの、症例数の不足から有意な有効性は認められてない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の全体的な目的は、難治性の神経障害性疼痛患者に対する新しい治療法として和温療法を試み、その鎮痛効果と社会生活へ の復帰度を検討することであった。しかし、難治性神経障害性疼痛患者の持つ心理的因子や複雑な社会的背景から、この単独の治療法の効果には限界があることが示唆された。 九州大学病院ペインクリニック受診患者 のうち、4ヶ月以上疼痛を有し、薬物治療や神経ブロック治療などで十分な治療効果を得られない慢性疼痛患者に対して、治療法の内容を説明し、最大15ヶ月間の和温療法を実施した。内訳は、線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群、外傷性神経障害性疼痛の 患者であった。和温療法単独による難治性慢性疼痛患者への有効性は否定的である。患者は、和温療法を希望され、治療後の痛みの軽減は得られるものの、長期的な改善効果は単独では得られないと判定された。これには、難治性慢性疼痛患者が抱えている心理的因子の比重が大きく、このような患者へは、和温療法のようなサポート治療は、一時的疼痛軽減には効果があっても、他の因子の影響が大きいため、本質的な疼痛軽減までは至らないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
難治性疼痛患者に対する治療法は、多面的治療法が必要である。和温療法を継続しながら、新たな薬物療法として漢方薬を積極的に取り入れることにする。漢方薬は、気、血、水の巡りをよくすることから、和温療法の効果と相まって、痛みの治療に力を発揮すると思われる。漢方薬のうち、とくに痛みに効果があると思われるものを選択するにあたって、漢方薬を日常的に使用している本院、漢方外来の医師にも協力を頂いて、難治性疼痛患者への漢方的診断と処方を実施する。漢方薬の処方については、本院で平成26年4月から疼痛効果の期待される薬物へも認可されることになったので、ようやく疼痛治療への漢方薬の処方が可能になった。それを踏まえて、今後和温療法と漢方治療、そして和温療法と貼付パッチの併用療法の効果を検討してみる。その上で、どのような患者にどのような漢方と和温療法、パッチ製剤と和温療法の組み合わせが最適であるかと検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、難治性の神経障害性疼痛患者に対する新しい治療法として和温療法を試み、その鎮痛効果と社会生活へ の復帰度を検討することであった。しかし、難治性神経障害性疼痛患者の持つ心理的因子や複雑な社会的背景から、この単独の治療法の効果には限界があることが示唆された。和温療法単独による難治性慢性疼痛患者への有効性は否定的である。患者は、和温療法を希望され、治療後の痛みの軽減は得られるものの、長期的な改善効果は単独では得られないと判定された。このように和温療法の臨床効果が期待通りでなく、計画の修正が必要となったことで当初の使用額を下回り、次年度に使用額が生じた。 一年延期しての研究となり、今年度は残額を使って、学会発表と、研究のまとめ、そしと、研究成果印刷費に使用する予定である。
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