研究課題/領域番号 |
23592297
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
趙 成三 長崎大学, 大学病院, 講師 (90325655)
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / 虚血再灌流傷害 / 肝臓 / 揮発性麻酔薬 / チアゾリン薬 / インクレチン |
研究概要 |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝硬変へ移行する病態として注目されているが、生活習慣病の増加に伴い、本邦でも患者数が増加(およそ100万人と推定)している。また、NASHでは肝虚血傷害が正常肝より強くなることが報告されている。揮発性麻酔薬は肝虚血保護作用を有するが、NASHにおける検討はない。糖尿病薬のチアゾリン薬やインクレチンはNASHの進展予防だけでなく、直接的な肝虚血保護作用も報告されてきている。NASHに対する揮発性麻酔薬と糖尿病治療薬の相互作用を検討し、より有効な肝虚血保護効果方法を確立させることを目的とし、以下の検討を行った。実験3)正常およびNASHラットで揮発性麻酔薬セボフルラン(SEVO)虚血前投与とチアゾリン薬ピオグリタゾン(PIO)またはインクレチンのリラグルチド(LIRA)の虚血前投与による相互作用を調べた。実験内容)SEVO長時間群(SEVO 4%を虚血前15分前まで4時間投与し、肝虚血)、SEVO短時間群(SEVO4%を虚血前15分前まで15分間投与し、肝虚血)とPIO 3日間投与群、LIRA 3日間投与群、PIOまたはLIRA 1回投与群を組み合わせて、それぞれの群で肝細胞障害の指標、生存率を調べた。結果)それぞれの群で、正常およびNASHラットでの肝細胞障害の指標、生存率を検討したが、正常ラットにおいては、保護作用における相互作用を認めなかった。NASHラットでは、PIO 3日間投与群+SEVO短時間群が、単独群と比較して肝細胞障害の低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は全て長崎大学の先導生命科学研究支援センター内にある動物実験施設で行っているため、実験操作だけでなく研究に関わる一連の作業が安全かつ効率的に行えることに加えて、既にラット肝虚血再灌流障害モデルを用いた研究を以前から行っており、実験モデルが確立されていることと、大学内の他の研究グループ(麻酔科内および移植消化器外科)とのカンファランスによる検討やアイディア、支援などの協力も得られる環境であること、さらに動物実験担当技官や大学院生の協力も得ることができたためと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、揮発性麻酔薬セボフルラン(SEVO)とチアゾリン薬ピオグリタゾン(PIO)またはインクレチンのリラグルチド(LIRA)の虚血前投与による保護効果メカニズムを解明するために、再灌流6時間後の肝組織をphospho-PI3K、phospho-eNOS、HO-1の免疫染色を行い、解析を行う。さらに、PI3K-Akt、eNOS、HO-1阻害薬であるwortmanninを0.6 mg/kg、NG-nitro-L-arginine methyl ester(L-NAME)を25 mg/kgの再灌流5分前に投与、tin protoporphyrin IX(SnPP)を50 μM/kg虚血5分前投与し、肝細胞障害の指標、生存率を比較する予定である。 学会発表、論文作成の他、追加実験を行い、本研究を終了させる。また、「正常およびNASHラットで揮発性麻酔薬とPDEIII阻害薬の併用による肝虚血再灌流に与える影響」のpreliminary studyを開始する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に、①実験動物のラットと特殊飼料の購入費用、②薬品としては麻酔薬ペントバルビタールやセボフルラン、糖尿病治療薬ピオグリタゾンやリラグルチド、PI3-Akt活性化阻害薬wortmannin、eNO阻害薬L-NAME、HO-1阻害薬SnPP、の購入費用、③肝障害の指標であるAST、ALT、α-GSTの測定は外注する。組織標本の作製やHE染色、TUNEL染色、phospho-PI3K、phospho-eNOS、HO-1免疫染色は委託業者にホルマリン固定した試料を送付し、作製を委託する費用にあてるとともに、学会発表のための旅費、論文作成費用に一部を充てる予定である。
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