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2012 年度 実施状況報告書

TACR1遺伝子エピジェネティック修飾解析を用いた麻薬による嘔吐発症機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23592301
研究機関札幌医科大学

研究代表者

杉野 繁一  札幌医科大学, 医学部, 助教 (00423765)

キーワード国際情報交換
研究概要

申請者らは本研究を通じて、ヒトにおいてTACR1遺伝子のプロモーター領域におけるメチル化率は術後嘔気嘔吐(PONV)と関連することを発見した。このことはTACR1遺伝子は当初の予想通りPONVに関係しており、その発現はPONVの程度と相関することを示し、平成24年度米国人類遺伝学会に発表した。
また本研究の中で、エストロゲン応答配列(ERE)近傍の遺伝子多型がPONVの程度と大きく関与することを発見した。これまでエストロゲンの血中濃度がPONVの程度と関係することはよく知られていることであるが、その機序は不明であった。本研究により女性がなぜPONVの発生頻度が高いのか、またその程度が男性と比較して重度であるのか、その機序の一端が解明できると思われる。
さらにマウスによる動物実験を通じて、血中TACR1遺伝子プロモーター領域と相関が認められる一部の脳神経核を発見した。さらにmRNAの発現解析を通じ、遺伝子のプロモーター領域におけるメチル化率とmRNAの発現量は逆相関が認められた。またパイカ行動(異食行動)によるマウスの嘔吐関連行動もTACR1遺伝子のメチル化状態およびmRNAの発現量がPONVと関与することを示唆した。
以上の結果を総合し、TACR1遺伝子の発現状態およびメチル化率と、またエストロゲンによる当該脳神経核における増減をモニタリングする実験系を確立し、その上でエストロゲン存在下で嘔吐が誘発される機序の一端を解明した。今年度はその知見を発表する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初まではTACR1遺伝子の発現を調節する因子であるプロモーター領域にメチル化率と臨床症状との関連を着目していたが、本研究の結果はエストロゲンによりTACR1遺伝子が高度に調節されていることを新たに発見した。TACR1遺伝子はその発現により直接的に嘔気嘔吐を誘発するため、エストロゲンの血中濃度が高いことはPONVの発症頻度を増大させることに十分な証左と考えられる。またマウスにおいても脳内のTACR1遺伝子の発現プロファイルおよびメチル化率を測定する実験系を確立し、その論理を補完する現象も確認できている。

今後の研究の推進方策

今後は嘔吐中枢におけるTACR1遺伝子のmRNA発現プロファイル・メチル化率と血液におけるそれと比較し、血液におけるTACR1遺伝子のメチル化率がPONVのバイオマーカーとなりえるか、また新規創薬の可能性があるのか探索したい。

次年度の研究費の使用計画

分子遺伝学的試薬

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公開日: 2014-07-24  

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