研究概要 |
肺高血圧症や冠動脈スパズム等の血管過剰収縮に、カルシウム感受性亢進が関与している。しかし多くの血管拡張薬は異常血管のみならず、全身血管も拡張させるため、臓器還流圧も低下させる。研究代表者は平滑筋収縮の主経路であるカルシウム依存性MLCK活性化をin vivoでreal-timeに測定できる”MLCK sensor”を用い、カルシウム感受性亢進の機序を報告してきた。本研究は、この遺伝子導入マウスで肺高血圧モデルを作製し、肺血管収縮機序を解明し、これにより肺血管過収縮を選択的に拡張させる治療法を検討することを目的とした。 しかし残念ながら"MLCK sensor" 及び transgenicマウスは一定の条件下ではカルシウム感受性を反映していない可能性があることが判明した。従ってこの条件下で当初予定したようにtransgenic miceを用いた肺高血圧モデル治療法の検討することは適切でないと判断した。 一方で、wild type ratsを用いたモノクロタリン誘発肺高血圧モデルにおいてMLCK自身がリン酸が低下していることが判明した。MLCKはリン酸化によりカルシウムに対しdesensitizationを来すことが報告されている、肺リング標本を用いた等尺性張測定では張力発生は亢進が認められ、CPI-17, MYPT1のリン酸化等のカルシウム感受性を亢進させる反応が同時に起きていた。以上から、肺高血圧におけるカルシウム感受性亢進は従来のCPI-17, MYPT1のリン酸化等のみならず、MLCKのリン酸化低下の関与もあり、これをリン酸化させることで肺血管張力を制御できる可能性が示された。
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