手術侵襲と酸化ストレスの関係について、以下の研究成果を上げた。 (1) 手術侵襲や敗血症などで重要な生理機能を司るマクロファージからのサイトカイン産生反応の分子メカニズムを解析し、ミトコンドリアとMARK pathwayの重要性を明らかにした。 (2) 手術前の酸化ストレス病態が、術後の回復過程や合併症の発症を決定する重要な因子であることを明らかにした。さらに、麻酔管理法を工夫することにより酸化ストレス病態の影響を軽減できることを明らかにした。 (3) 手術侵襲の一つである術後疼痛の軽減方法について、様々な神経ブロックを行い、その有効性を明らかにした。さらに、心血管系に重大な合併症を有するハイリスク症例の手術ほど、全身麻酔に神経ブロックを併用することにより、手術中の循環系変動が少なくなり、心血管系の合併症を予防できる可能性を明らかにした。 (4)局所麻酔薬に低分子デキストランを添加することにより、神経ブロックの持続時間を伸ばし、同時に局所麻酔薬中毒を予防できることを明らかにした。 以上の一連の研究により、麻酔管理法により患者の予後を改善できる可能性が明らかとなり、外科治療における麻酔科学の新たな重要性が明らかとなった。
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