研究概要 |
モルヒネの鎮痛耐性形成にNMDA受容体の活性化が関与することは知られている。しかし、そのNMDA受容体活性化メカニズムについては明らかにされていない。申請者らはD体アミノ酸であるD-セリンがNMDA受容体グリシン結合部位の内在性リガンドとしてNMDA受容体活性を調節する因子であること、下行性疼痛抑制経路に関与することなどを明らかにしてきた。本研究ではモルヒネ鎮痛耐性の分子機構解明を目的とし, これらの形成に深く関与するNMDA受容体活性へのD-セリンの役割の解明を目指した。申請者らは、① D-セリンを脳室内投与し鎮痛効果が得られること、② D-セリン脳内投与はモルヒネの鎮痛効果を増強すること、③ D-セリンの鎮痛効果がナロキソンによって拮抗されること、などを明らかにした (Ito, Yoshikawa, et al, 2013、2007)。これらの結果は、NMDA受容体を介しオピオイド受容体を刺激し鎮痛作用が現れることを示唆している。申請者は、D-アミノ酸酸化酵素(D-amino acid oxidase; DAO)欠損マウスを用いて、鎮痛実験を行った。その結果、DAO欠損マウスでは疼痛閾値が低下していることをtail-flick、ホルマリン法で明らかにした。今後、セリンラセマーゼSrrノックアウトマウス(Srr-KO)、Srr/DAOノックアウトマウス(Srr/DAO-KO)などを用い、鎮痛効果とモルヒネ鎮痛耐性について検討する予定である。
|