研究課題/領域番号 |
23592313
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
苗村 潔 東京工科大学, 医療保健学部, 准教授 (90302752)
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研究分担者 |
古屋 耕平 中央大学, 理工学部, 助教 (40580056)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 黄色靭帯 / 冷却 / 有限要素解析 / ブタ / 天然ゴム |
研究概要 |
研究代表者の苗村は,ブタ脊椎を用いた予備的実験をおこなった.試料を冷却と冷凍および体内を想定した加温の3種類準備した.針による穿刺実験の結果,4℃に冷却したブタ脊椎では黄色靭帯の伸び変形への影響は見られなかったが,冷凍したブタ脊椎では顕著に黄色靭帯の伸び変形は低下した.しかし,ブタ脊椎を冷凍した場合,硬膜外針では穿刺ができず,注射用の針を用いる必要があった.注射用の針は硬膜外麻酔には不向きであるので,冷却と冷凍によって黄色靭帯の物性が如何にして変化しているかを調べる必要があることがわかった.研究分担者の古屋は,黄色靭帯の伸びを抑えつつ穿刺する針の先端形状と穿刺方法を検討するための基礎として,黄色靭帯など生体組織と同様の特性を持つ非圧縮性材料の天然ゴムを対象に,先端が尖った棒材でゴムを突いた際の変位-反力を非線形有限要素解析で求め実験結果と比較した.棒材の先端形状は異なる3種類を用意し,ゴムの温度は常温,3次のMooney-Rivlin体と仮定し引張り試験で得られた力学指標でモデル化した.有限要素解析と実験結果は良く一致しており,針の先端形状の差による黄色靭帯の伸びを予測できる可能性を確認した.これにより針の最適な先端形状の検討が可能となる.また黄色靭帯を3次のMooney-Rivlin体でモデル化する際に必要となる力学指標とその計測法を確認した.以上の結果に基づき次年度では黄色靭帯での実験,解析を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブタ脊椎を用いた実験において,冷凍により黄色靭帯の伸び変形が抑制可能であることが示された.しかし,冷却と冷凍で黄色靭帯の物性がどのように変化しているのかが不明確で詳細に検討する必要があるため,以上を考慮して概ね順調に進展していると評価した.針の最適な先端形状,穿刺方法を検討するための有限要素解析では,計画していたように先端形状による差を予測可能にし,黄色靭帯をモデル化するために必要な力学指標とその計測法を確認した.一方で温度による特性変化を実験で把握する点が完了しておらず,以上を考慮して概ね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
ブタ脊椎を用いた実験では,東京工科大が所有する透過型電子顕微鏡と研究代表者が既に所有しているプログラムフリーザと引張試験器を用いて,冷却条件を精密に制御した黄色靭帯の物性を調べる.研究分担者の古屋は4月から岐阜大学へ異動するが,中央大学で指導していた大学院生は引き続き有限要素解析の研究を続ける.役割分担や研究計画について,定期的に話し合って進めることで研究遂行には支障なく実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は予備実験を中心に実施していたため,成果発表の旅費の支出が少なかった.平成24年度に繰り越した予算については,成果発表および情報収集のための旅費に充てる計画である.研究代表者の苗村は,ブタ脊椎を用いた実験を継続するので染色代を引き続き支出する.研究分担者の古屋は,有限要素法のソフトウエアライセンス料を支出する.材料物性を同定する際の引張試験機のレンタル料と実験用の力センサーの購入に支出する.
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