研究課題/領域番号 |
23592314
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
樫葉 均 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (10185754)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脊髄後角ニューロン / パッチクランプ法 / ラット |
研究概要 |
最近、新鮮スライス標本を用いたパッチクランプ法の発展にともない、ニューロンの電気活動や膜特性、加えてバイオサイチン等を用いての単一ニューロンの標識などが比較的容易にできるようになってきた。更に、免疫組織化学法や電顕法を組み合わせることにより、大脳皮質等の局所神経回路が次第に明らかとなってきた経緯がある。しかしながら、脊髄においてはその新鮮スライス標本の作製の困難さと、脊髄分節性および層区分(I層~X層)によるニューロンの連絡が複雑で、局所神経回路の解明は遅れている。我々の研究室においても、パッチクランプ法を用い、脊髄の新鮮スライス標本からホールセル記録を行なっており、記録したニューロンを免疫組織化学法よりそれらの神経伝達物質を同定し、同時に単一ニューロンの形態も観察している。これまでの研究より申請者らは、脊髄後角、特にその深層において侵害性の情報処理が殊のほか大きく取り扱われていること、また下行性疼痛抑制系の入力も受けていることなどを明らかにしてきた。この下行性の入力は、必ずしも抑制性だけではなく、上位中枢への投射ニューロンを興奮性に導いている可能性も見出している。これらの結果をさらに発展させて、この領域における局所神経回路の解析と末梢神経障害に伴う神経因性疼痛の調節機構を明らかにしたい。本研究から生み出された成果は、基礎医学的価値のみにとどまらず、近い将来の臨床医学に反映できるものと確信し、研究に邁進しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、脊椎動物における中枢神経系、特に大脳皮質における局所神経回路の概要が徐々に明らかにされつつある。それに比較して、脊髄後角の神経回路のイメージについては甚だ貧困であると言わざるを得ない。末梢からの痛覚の情報は、脊髄後角の表層に入力し、主に後角のI層とV層に位置する投射ニューロンが、それらの情報を視床に伝える。後角には、これらの興奮性ニューロンに加えγアミノ酪酸(GABA)やグリシンを含有する抑制性の介在ニューロンが存在し、痛覚の情報伝達に何らかの修飾を加えている。が、その詳細については明らかにされていない。これまで我々は、GABA/グリシン作動性ニューロンの多くがエンケファリンを含んでいることを手掛かりに、エンケファリンの膜電位応答を解析した結果、サブスタンスP(SP:侵害受容ニューロンに含まれる興奮性神経ペプチド)の入力を受ける深層ニューロンが、GABA/グリシン作動性ニューロンの入力を受けること、深層ニューロンもまた、脳幹からの下行性抑制系の入力を受けることなどが明らかになってきた。このように後角深層では、非侵害性の情報だけでなく侵害性の情報もまた大きく取り扱われていることが分かった。これまでの研究から徐々にではあるが脊髄後角の局所神経回路のイメージが見えてきたところである。平成23年度のおける研究においては、脊髄後角ニューロンに投射する脳幹由来のセロトニン作動性、及びノルアドレナリン作動ニューロンの調節機構の全容が明らかになってきており、期待通りの成果が得られているところである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、パッチクランプ法を主軸として、単一ニューロンの標識とその形態学的解析、免疫組織化学法、in situ ハイブリダイゼーション法を組み合わせながら、脊髄後角の局所神経回路の可塑性について検討するものである。このうち、本研究の研究分担者である大島稔と内田靖之は、単一ニューロンの標識とその形態学的解析および免疫組織化学法の一部を担当する。その他の実験については、1名の大学院生(和田達也)と申請者が行う。 ブラインドパッチクランプ法は、シールテストによる電極抵抗を手がかりに電極を神経細胞に接着させる方法で、新鮮スライスの表層から深層までのニューロンを標的にすることができる特徴を有する。このため、成体における神経回路の解析に最も有効な方法であるとされている。我々は既に、この方法により脊髄スライスの神経細胞をホールセル記録し、解析を進めている。 これまでの研究から、脊髄後角の深層ニューロンは触圧覚や深部感覚などの非侵害性の情報のみならず、侵害受容ニューロンからの侵害情報もまた大きく取り扱われていること、深層ニューロンの多くもまた、脳幹からの下行性抑制系の入力を受けていることなどを明らかにしてきた。今回の研究では、脊髄後角深層における局所神経回路、および後角ニューロンの下行性抑制系の入力に対する応答について、形態学的手法を組み合わせたブラインドパッチクランプ法やin situ ハイブリダイゼーション法を用い検討し、これまでの成果をさらに発展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまで、脊髄後角の深層ニューロンで記録できるEPSC(興奮性後シナプス電流)はCNQX(グルタミン酸AMPA受容体の拮抗薬)で、IPSC(抑制性後シナプス電流)は、bicuculline(GABAA受容体の拮抗薬)とstrychnine(グリシン受容体の拮抗薬)で消失することから、後角深層における速いシナプス伝達(fast synaptic transmission)は、主にグルタミン酸、GABA、グリシンの伝達物質に起因すると考えられる。このうち、抑制性の伝達物質であるグリシンはGABA作動性ニューロンに含まれることが知られている。本研究において、パッチ電極で記録しているニューロンが興奮性(グルタミン酸)か、抑制性(GABA/グリシン)か、を同定することが重要となる。本研究では、興奮性ニューロンおよび抑制性ニューロンを、抗vesicular glutamate transporters 2 (VGluT2)抗体および抗Glutamic Acid Decarboxylase(GAD)抗体を用いて同定する。 パッチクランプ法により、biocytinを注入した細胞をFITC標識したアビジンで可視化し、デジタル信号に変化した後、このサンプルをin situ ハイブリダイゼーション法に供する。グルタミン酸、GABA、およびグリシン作動性ニューロンを標識するプローブとして、それぞれ VGluT2、GAD67/65、glycine transporter-2(GlyT-2)のcDNAプローブおよびcRNAプローブを用い、比較・検討する。
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