研究課題/領域番号 |
23592330
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
西山 博之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20324642)
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研究分担者 |
宮崎 淳 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10550246)
及川 剛宏 筑波大学, 医学医療系, 講師 (00361345)
末富 崇弘 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10574650)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 尿路上皮癌 / CXCR4 / βarrestin2 / TXNIP / 膀胱癌早期診断治療法 |
研究概要 |
TXNIPによるβ-arrestin2 発現調節機構の解明β-arestin2を中心としたCXCR4-ERK経路とTXNIPレドックス関連経路のクロストークの解明が尿路上皮初期発癌機構の解明につながり、その知見をもとに新規の治療・診断法を確立できるのではないか、という着想から今回の研究は始まっている。TXNIPがβ-arrestin2を制御することは既に見出しているが、その制御機構については未だ分かっていない。そこで、細胞株(TXNIP 非発現細胞株およびTXNIP 強制発現細胞株)およびマウス発癌モデル(WTマウスおよびTXNIP-KO モデル)を用い、β-arrestin2 の遺伝子発現レベル・蛋白レベルでの調節機構を明らかにする。 まず、β-arrestin2 を介したCXCR4-ERK活性化による膀胱発癌機序の解明するために、β-arrestin2に対するsiRNA および強制発現細胞株を樹立し、「β-arrestin2 を介したCXCR4-ERK 活性化膀胱発癌機序」を明らかにする。また、TXNIPがβ-arrestin2を制御することは既に見出しており、細胞株(TXNIP 非発現細胞株およびTXNIP 強制発現細胞株)およびマウス発癌モデル(WT マウスおよびTXNIP-KO モデル)を用い、β-arrestin2 の遺伝子発現レベル・蛋白レベルでの調節機構を明らかにする。TXNIPノックアウトマウスの作成は順調に経過しており、本年度は20匹まで繁殖に成功した。今後これらマウスのBBNを経口摂取させ、膀胱癌を発癌させ、分子生物学的解明を行っていく
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上皮内癌発生の過程でSDF1のパラクライン作用を受け、上皮内でのCXCR4-ERK経路が重要であるという知見から、「β-arrestin2を中心としたCXCR4-ERK 経路とTXNIP レドックス関連経路のクロストークの解明と、その知見をもとにした新規の治療・診断法を確立」を目指す。本研究は以下の3点に重点をおく。1) β-arrestin2 による膀胱初期発癌調節機構の解明2) β-arrestin2 関連経路を利用した尿路上皮癌早期診断法の確立3) CXCR4-β-arrestin2-ERK 経路活性制御による新たな尿路上皮癌治療法の確立現在までに、細胞癌化シグナルとして重要なERK の上流分子であるCXCR4 が上皮内癌(cis)を含めた高悪性度の膀胱癌で高発現していること、CXCR4、アンタゴニストTF14016 により尿路上皮癌細胞株においてERK 活性化が抑制されることから、CXCR4-ERK 経路が膀胱発癌において重要な役割を果たしていることを見出している。さらに、今回この経路において重要な調節機構をになうscaffold 蛋白β-arrestin2 が、癌化機構に密接に関係するといわれるレドックス関連分子TXNIP によって制御をうける可能性を予備実験の結果から得た。また、現在までにTXNIPノックアウトマウスの作成にも成功しており、今後、分子生物学的解明を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
a) β-arrestin2 を介したCXCR4-ERK 活性化膀胱発癌機序の解明予備実験の結果より、マウス膀胱化学発癌やヒト膀胱癌臨床検体におけるSDF1-CXCR4 およびERK が活性化されていることおよびβ-arrestin2 が誘導されていることを見出している。β-arrestin2に対するsiRNA および強制発現細胞株を樹立し、SDF1 の刺激下にERK および細胞の癌関連の表現系の変化を解析する。表現系としては、細胞の浸潤能、転移能のほかに、正常細胞株から癌幹細胞への変化の際に本経路が関係するかどうかについても検討する。b) CXCR4 アンタゴニストを用いたマウス膀胱発癌抑制実験T140 誘導体による膀胱発癌抑制効果が確認されれば、臨床での応用を視野に入れていきたい。T140 誘導体の膀胱内投与は比較的安全であるものの、頻回な膀胱内注入は外来での臨床応用には適さないという問題がある。 とくに膀胱癌再発が集中する術後2-3 年後までは継続的な再発抑制が必要と考えられる。 そこで、マウス発癌モデルを用いて、T140の発癌抑制実験を行い、効果を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
CXCR4 アンタゴニストを用いたマウス膀胱発癌抑制実験現在TXNIPノックアウトマウスを作成中である。30匹まで増えた段階で、BBN経口摂取による膀胱発癌を開始する。0、4、8、12、16、20週 各5匹で開始。検討課題として1.βarrestinの発現:変化の有無を検討する。2.CIRP・RBM3・ガンキリンの発現変化:CXCR4-β-arrestin2-ERKの経路に関連があるか検証する。3.粘膜内および粘膜下の炎症性細胞・macrophageなどの変化(TXNIP-/-ではNK細胞やNKT細胞が著名に減る可能性がある)以上について、免疫組織学的および分子生物学的に検討する。これらの結果を踏まえ、β-arrestin2の発現制御機序および新規分子マーカーまたはCXCR4-ERK シグナルとTXNIP-β-arestin2経路を基に、従来の細胞診や既存の尿中マーカーとの比較や再発・多発性腫瘍との関連の有無を検討する。さらに、CXCR4 アンタゴニストを用いたマウス膀胱発癌抑制実験や膀胱癌の癌幹細胞を標的とした膀胱癌再発抑制治療の開発について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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