研究課題
本年度の目標は(1)新たに同定された中心体複製異常(以下CA)に関連する遺伝子の発現状況を臨床検体で解析し、複製異常を規定する遺伝子を同定すること(2)同定された遺伝子を抑制するmRNAをデータベースより解析し、同mRNA投与により発現抑制実験を行い、当研究室が保有する膀胱癌培養細胞株を用いて複製異常細胞数の割合を検討すること(3)非侵襲的臨床検体(膀胱洗浄液)を用いて、筋層非浸潤性膀胱癌の予後予測が臨床的に可能か否かを検討することの3点であった。(1)CAの有無を判定しえた臨床検体76例のarrayCGH解析結果を指数関数の重みを用いた重み付きt検定で解析した結果、ABI1、C10orf51、ZNF253、ZNF93、XRCC5、SPOP、SLC35B1、ZNF713、MRPS17、GBAS、PSPH、CCDC83の遺伝子群がCA陽性例で有意のコピー数変異をきたしていた。本結果については論文として掲載された。(2)AuroraA関連遺伝子を制御する可能性のあるmiRNAで、KK47で特異的に変動しているmiRNAとしてhsa-let-7c、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1268、hsa-miR-17、hsa-miR-193b、hsa-miR-196a、hsa-miR-19a、hsa-miR-92aがリストアップされ、(1)の遺伝子群をターゲットとしている可能性のある関連を2つの異なるデータベースで検索した結果、共通するmicroRNAおよびそのターゲット遺伝子としてhsa-miR-1225-5pおよびGBASがリストアップされた。現在解析結果をもとに膀胱癌継代細胞株を用いて機能解析実験を行っている。(3)膀胱洗浄液78検体を使ったCA解析にて腫瘍進展(筋層浸潤)の独立予後予測因子であることが証明され、予後予測マーカーとしての有用性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度目標とした3つの項目はおおむね達成され、その研究結果は2本の論文として雑誌に掲載されたため。
これまでに得られた知見をもとに25年度は以下を解明する予定である。(1)中心体複製異常をコントロールしていると推定されるmicroRNAとしてhsa-miR-1225-5p、そのターゲット遺伝子としてGBASに注目し、膀胱癌継代培養細胞株を用いた機能解析実験をおこなう。(2)GBASの関与が証明された場合、中心体複製異常の有無を検討した症例(約120例)を用いて免疫組織染色により、検証作業をおこなう。
本年度の実験において膀胱癌継代培養細胞株を用いた機能解析実験が行えなかったため平成24年度未使用額(457,609円)が生じた。この未使用額については平成25年度の研究費と併せて、機能解析実験に使用する予定である。
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Cancer Genetics
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