研究課題
欧米での主要な癌の1つである前立腺癌は、近年日本でも増加しその診断および治療は重要な医療課題である。現時点では、プロテアーゼである前立腺特異抗原(PSA)が診断マーカーであるが偽陽性率が高い。また、去勢療法後に癌が不応型に変異すると有効な治療法がなく、予後不良である。そこで、新たな診断と治療法の開発をめざし、去勢不応型に特異的なプロテアーゼの探索をおこなった。2アミノ酸からなる合成基質95種類を使って、ホルモン感受性株LNCaPと不応性株PC-3とDU145の培養上清のプロテアーゼ活性を測定すると、ある一種類の基質に対する活性が不応型に特異的であった。その基質特異性からこの活性はPSAとは異なるプロテアーゼに由来すると推定された。次に、種々のプロテアーゼインヒビターの抑制効果でこの活性の性質を解析すると、DFPによってのみ活性が抑制されるセリン型であることがわかった。さらに、癌細胞を分画してプロテアーゼの局在を調べると、活性は細胞膜に局在していた。去勢不応型前立腺癌に特異的な細胞膜プロテアーゼの存在が明らかになった。去勢不応性株PC-3細胞を、この特異的な基質の2アミノ酸配列のアミノ末端をビオチンでラベルしカルボキシ末端をクロロメチルケトンで付加したインヒビターで処理し、抗ビオチンマウスIgGを反応させたあと、CFTM568標識抗マウスIgGヤギ抗体を加えると、癌細胞膜に赤色蛍光の局在したことから、このプロテアーゼの細胞膜局在が確認された。上記のインヒビターでPC-3細胞のプロテアーゼを標識した後膜を可溶化して遊離させ、monomericアビジンカラムに吸着させて2mMビオチンで溶出した。この溶出分画を二次元電気泳動し、ニトロセルロース膜に転写後HRP標識アビジンでプロティングを行い、7-8個のスポットを検出した。これらのスポットをプロテオミクス解析したが、プロテアーゼは含まれていなかった。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Clin. Cancer Res.
巻: 19 ページ: 2004-2013
10.1158/1078-0432.CCR-12-1204