研究課題/領域番号 |
23592339
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
河野 吉昭 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (30593793)
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研究分担者 |
江藤 正俊 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (90315078)
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キーワード | 前立腺癌 |
研究概要 |
当教室で保有するヒトDkk-1 cDNAを用いて、TetR制御下においてテトラサイクリン依存性に発現誘導が可能となる発現プラスミドを作成(pcDNA4/TO-hDkk1-Flag)し、lipofecionによるLNCaP/TR2細胞への導入とブラストサイディン及びゼオシンによる二重選択を行う ことによって、Dkk-1蛋白の誘導発現クローンを樹立した(LNCaP/TR-hDkk-1-Flag)。同細胞を用いてレポーターアッセイやcolony formation assayを行ったが、現時点ではDkk-1発現誘導がアンドロゲン受容体活性及びアンドロゲン非依存性増殖に影響を及ぼすことを示唆するような所見は得られていない。さらに、ヒトアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株であるPC-3がDkk-1を発現し、SMARTpool siRNA(Thermo Scientific社)のトランスフェクションによるDkk-1ノックダウンが可能であることを確認し、同細胞の浸潤能に対するDkk-1ノックダウンの影響をBoyden Chamberを用いたinvasion assayにて検討しているが、現時点ではDkk-1ノックダウンが浸潤能に影響を変化させることを示唆する所見は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は前年度において当初の計画に従い、①アンドロゲン依存性前立腺癌細胞におけるDkk-1過剰発現の影響の評価、②去勢抵抗性前立腺癌細胞におけるDkk-1ノックダウンの影響の評価、を行った。従って、昨年度も概ね計画通りの研究が推進されている。予想に反し、①②ともにDkk-1発現を変化させることによる影響を現時点では認めていないが、①についてはテトラサイクリン非誘導状態におけるleaky expression、②においては当初予想していなかった内因性の要因(例:他のgrowth factorなどへの影響) が実験結果に影響を及ぼしている可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はまず前年度に得られた結果からの考察を踏まえ、前年度行った研究に新たな条件(Wnt ligandの添加など)を加えて、前年度の研究の再評価を行っていく予定である。こうした条件でDkk-1の発現変化が前立腺癌細胞株の表現型に影響を及ぼす事が見出された場合は、申請書に記載されている研究計画通り、同表現型変化を制御するキナーゼの同定を試みる予定である。日程に余裕があれば、その治療応用の可能性について検討するためにヌードマウスを用いたxenograftの系を用いたin vivoの実験も行って行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画において、LNCaP/TR-hDkk-1-Flag、PC-3といった細胞の培養は不可欠であるため、培地及びウシ胎 児血清の購入が必要である。また前二者の培養では、導入プラスミドにコードされているTetR並びにhDkk-1の発現を担保するために、二重選択に用いた選択マーカーであるブラストサイディンとゼオシンを必要とするため、これらの購入が必要である。siRNAを用いたノックダウンの実験には、Dkk-1を標的とするsiRNAとそのコントロール、そしてトランスフェクション試薬が必要であるため、これらの購入が必要である。さらに前項で記載した実験を進めていくためには、細胞増殖評価のためのWST-1(Roche Diagnostics)、浸潤能評価のためのMatrigel chamber(BD Bioscience)、運動能評価のためのLabTek Chamber(Nunc)、F-アクチン染色のためのAlexa488- 標識Phalloidin(Invitrogen)が必要であるため、これらの購入が必要である。従って、本年度に使用予定の研究費はこれらの試薬並びに物品の購入に充てられる予定である。さらに情報収集目的にて適宜学会・研究会への出席も行うため、これらの旅費にも充てられる予定である。
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