研究課題/領域番号 |
23592341
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
木村 太一 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (60596360)
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研究分担者 |
松村 英理 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (30457676)
齋藤 誠一 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80235043)
町田 典子 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70448588)
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キーワード | 尿路上皮癌 / 尿中マーカー |
研究概要 |
我々は癌の糖鎖研究の過程で、糖鎖を認識するモノクローナル抗体RM2が前立腺癌由来の糖蛋白であるhaptoglobin-beta鎖に選択的に反応すること、RM2が認識するhaptoglobin-beta鎖は前立腺癌の新たな組織・血清マーカーであることを報告した。近年haptoglobin構成分子は、汎腫瘍マーカーの可能性を有しているといわれているため、癌由来のhaptoglobin-beta鎖に選択性のあるRM2を用いれば、高い感度・特異度をもって癌の検出ができる可能性があると考えられる。そこで、まずモノクローナル抗体RM2が反応する糖蛋白が、悪性度の高い尿路上皮癌を早期癌の状態で発見する能力を有するか否かを調べることを目的に研究を計画した。まず1)約50例の尿路上皮癌患者を対象として、モノクローナル抗体RM2による尿中糖蛋白の検出をウエスタンブロッティング法で行い、2)RM2による糖蛋白に対する陽性反応と各種臨床病理学的パラメーターとの関連を統計学的に解析したところ,1)および2)の結果は、悪性度(grade)の高い膀胱尿路上皮癌を有する患者ではわずか20μlのスポット尿で75kDa前後の糖蛋白への反応が認められ、その反応の強さは悪性度に比例している可能性が高いことが分かった。この75kDa 前後の糖蛋白の解析を行ったところ、数種類の糖蛋白へ絞りこむことができた。それぞれの糖蛋白に対応する抗体を用いて、約50例の膀胱癌患者尿をウエスタンブロッティングした。すると、1つの抗体において悪性度の高い膀胱癌患者ほど尿中80kDa糖蛋白が増加することが確認された。 現在、この80kDa糖蛋白に対する抗体を使用し、膀胱癌組織を用いた組織化学免疫染色を施行し、癌組織内での反応を確認し、さらに膀胱癌細胞株と正常膀胱上皮細胞株を用いて、この80KDa糖蛋白の発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
尿路上皮癌の新規尿中マーカーとしての80KDa糖蛋白の臨床的意義と生物学的役割について、まず尿路上皮癌約70症例の尿における80KDa糖蛋白発現と臨床病理学的パラメーター(悪性度、病期、再発など)との相関を解析し悪性度との相関を確認しつつあるが、さらに尿路上皮癌症例数を増やしてデーター解析中である。しかしの該当症例の尿の収集が思うように集まっておらず、解析が遅れている。 また膀胱癌組織、正常膀胱組織を用いた80KDa糖蛋白に対する組織化学免疫染色を行い、それぞれの組織内におけるに発現ついて実験中であるが、正常膀胱組織の入手が難しく、症例数を重ねることが難しいため実験がやや遅れている。 また、数種の膀胱癌細胞株および正常膀胱上皮細胞株を用いて、80KDa糖蛋白の発現の差についてはおおよその結果が判明し、現在条件を変えて再現性を確認しているが、正常膀胱状細胞株の入手が大変難しくなっており現在米国からの入手待ち状態のため、実験がやや遅れている。 現在使用している80kDa糖蛋白に対する抗体の他に、同蛋白上のある特異的な糖鎖を探究し、特異的な糖鎖が判明したら、80KDa糖蛋白に対する抗体とその糖鎖に対するレクチンを用いて、サンドイッチアッセイによる簡易診断法のプロトタイプの作成を試みる予定だが、特異的な糖鎖の特定にはまだ至っておらず、実験継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に達成できなかった症例収集を今年度はまず優先して行い、実験と解析を進めていく。 現在使用している80kDa糖蛋白に対する抗体の他に、同蛋白上のある特異的な糖鎖の探究を進め判明した際には、80KDa糖蛋白に対する抗体とその糖鎖に対するレクチンを用いて、サンドイッチアッセイによる簡易診断法のプロトタイプの作成を試みる。 また、80kDa糖蛋白や糖鎖解析で判明した糖鎖の、尿路上皮癌細胞における増殖・浸潤・遊走等における役割を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
免疫組織染色、細胞培養を継続して実験を進めるための費用(米国からの入荷待ちの細胞株を含め)と、実験をすすめた上で或る程度の糖鎖に絞り込むことができたら、糖鎖解析を行うための費用に使用する予定である。
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