研究課題/領域番号 |
23592350
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
藤村 務 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70245778)
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キーワード | 悪性前立腺がん / ハプトグロビン / 糖鎖修飾ペプチド / がん特異的抗体 / シアル酸 |
研究概要 |
[研究の目的]私は、悪性前立腺がん患者由来の血清中からがん特異的な糖鎖修飾を受けたハプトグロビンを見出した。糖鎖解析によりハプトグロビンβ 鎖のアミノ酸残基Asn207、211に多岐化、シアル酸化、フコシル化などがん化による特異的な糖鎖の増加(異常)が認められた。そこで、がん患者および健常人血清由来ハプトグロビンから糖鎖修飾ペプチドを精製し(ハプトグロビンβ 鎖203から215残基)、それぞれを抗原に抗体を作製する。がん特異的な糖鎖修飾抗体の特異性を検討し、PSA値を補完するELISA法の確立を目指す。 [研究実施計画] Glycopeptide抗体の評価:「1.ウサギで作製した抗体の評価」前年度に作成した抗体の特異性と感度を評価した。ウエスタンブロット法で評価した結果、悪性前立腺がん患者と健常人を優位に区別することが可能であった。しかし、良性前立腺疾患の患者と悪性前立腺がん患者の間では不十分であった。原因として、作製した抗体の精製が不十分であったため、血清中に非特異的に反応するタンパク質が存在した。現在、抗体の精製度を上げ、特異性と優位性を評価中である。数ngの血清由来糖鎖ハプトグロビンを検出可能であることから、十分な感度が得られた。ELISA法で測定可能なプロトコールや反応条件を検討中である。「2.マウスで作製した抗体の評価」ウエスタンブロット法で評価した結果特異性は、ウサギの抗体より高い傾向を示したが、感度が不十分であった。ELISA法で測定可能なプロトコールや反応条件を検討中である。ELISA法を構築する上で、ウサギあるいはマウスで作製した抗体のどちらがより有効で、実用的であるか検討を重ねる必要があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性前立腺がん患者、健常人由来の血清からハプトグロビンβ鎖を精製し、目的の抗原 Glycopeptideを精製できた。その抗原を用いてウサギで作成した抗体は悪性前立腺がん患者と健常人を優位に区別することが可能であった。また、血清中の糖鎖ハプトグロビンを数ngで検出可能であり、十分な感度が得られている。良性前立腺疾患の患者と悪性前立腺がん患者の間では優位差が不十分であったが、作製した抗体の精製度を上げる(純度を良くする)ことにより十分解決可能と考えており、現在進行中である。ELISA法を構築する上で、ウサギあるいはマウスで作製した抗体のどちらがより有効で実用的であるか、現在、検討を重ねているところである。また、実用的なELISA法にする為に測定可能なプロトコールや反応条件の最適化も検討している。研究目標のELISA法の構築の検討段階に入っており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
悪性前立腺がん患者、健常人由来の血清から目的の抗原 Glycopeptideを精製できた。その抗原を用いてウサギで作成した抗体は悪性前立腺がん患者と健常人を優位に区別することが可能であった。今回作製した抗体は、一般的なペプチドあるいはタンパク質に対する抗体と違い、糖鎖修飾を含むペプチド構造全体を認識するのが特徴的であり、がん特異的な糖鎖修飾ペプチド配列を認識している。作製した抗体をLuminexビーズに結合させオリジナルなMultiPlex kit(ELISA法をベースとする)の開発を進める。このビーズと既知のがんマーカービーズ(PSAなど販売されているビーズ)を混ぜることにより、Glycopeptide抗体とPSAを別々に測定することなく一度の測定で複数のがんマーカーの測定が可能となる。複数項目を測定することにより多変量解析が可能となりがんマーカーとしての精度向上につながる。また、他のがんマーカーとも組み合わせることが可能であり、発展性(応用範囲)が広がる可能性を秘めている。本研究の目的であるがん特異的な糖鎖修飾抗体の作製と、PSA値を補完するELISA法の確立が可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
[ELISA法の構築] ウサギで作製した抗体は、悪性前立腺がん患者と健常人を優位に区別することが可能であった。しかし、良性前立腺疾患の患者と悪性前立腺がん患者の間では不十分であったことから、抗体の精製度を上げる(純度を良くする)為の条件検討をする必要がある。それに必要な消耗品(カラム、buffer、プラスチック製品など)として24年度未使用分(約59万円)を使用する。ELISA法を構築する上で、ウサギあるいはマウスで作製した抗体のどちらがより有効で実用的であるか(感度と特異性)、検討を重ねているところであるが、標識試薬や磁気ビーズの最適化、プロトコールの条件検討に25年度請求額(80万円)を使用する。具体的には、作製した抗体をLuminexビーズに結合させオリジナルなMultiPlex kit(ELISA法をベースとする)の開発を進める。このビーズと既知のがんマーカービーズ(PSAなど販売されているビーズ)を混ぜることにより、Glycopeptide抗体とPSAを別々に測定することなく一度の測定で複数のがんマーカーの測定が可能となる。複数項目を測定することにより多変量解析が可能となりがんマーカーとしての精度向上につながる。また、他のがんマーカーとも組み合わせることが可能であり、発展性(応用範囲)が広がる可能性を秘めている。本研究の目的であるがん特異的な糖鎖修飾抗体の作製と、PSA値を補完するELISA法の確立が可能となる。
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