研究課題/領域番号 |
23592351
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小島 聡子 帝京大学, 医学部, 准教授 (10345019)
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研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345013)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 前立腺癌 / 発癌 / 標的遺伝子 |
研究概要 |
平成23年度は、大きく分けて以下の3つの研究を行った。1. 前立腺癌miRNA発現プロファイルの完成:進行前立腺癌5例、正常前立腺癌5例についてmiRNA発現を、マイクロアレイを用いて発現解析を行った。その網羅的探索により、miR-133a, miR-31, miR-205, miR-1,miR-187, miR-370などのマイクロRNAの発現が前立腺癌において有意に低下することが示唆された。また、発現が亢進するmiRNAも同定され、前立腺癌におけるmiRNAのプロファイルが完成された。2. 前立腺癌細胞株を用いたmiRNAの機能解析:前立腺癌細胞株PC3とDU145を用いてそれらの発現が低いことを確認し、遺伝子導入をした場合に細胞増殖能が明らかに低下するものが、前立腺癌における癌抑制遺伝子を制御している可能性があると考え、miR-1とmiR-133aのクラスターに着目した。次に前立腺癌細胞株にmiRNAを前立腺癌細胞株(LNCaP, PC3, DU145)に遺伝子導入し強制発現させたところ、miR-1とmiR-133a が細胞増殖・浸潤能・移動能を抑制する働きがあることが示唆された。3. miRNAの標的遺伝子の同定:前立腺癌細胞株において強制的にmiR-1とmiR-133aを発現させた場合に、発現が変化する遺伝子を、マイクロアレイにて同定した。そのなかで、実際にヒト前立腺癌組織において発現が亢進しているものを選別すると、PNP(purine-nucleatid-phospholylase)という遺伝子が候補として挙がった。この遺伝子は、蛋白レベルで前立腺癌で強く発現していることから、前立腺癌において発現や癌の進展に強く関与する役割があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、23年度の研究計画1)前立腺癌miRNA発現プロファイルの完成2)前立腺癌細胞株を用いたmiRNAの機能解析3)miRNAの標的遺伝子の同定4) 去勢抵抗性前立腺癌におけるmiRNAの発現解析の順に研究をすすめ、前立腺癌のマイクロRNA発現プロファイルを完成し、論文を作成しBritish Journal of Cancer誌に掲載された。さらに、ヨーロッパ泌尿器科学会という国際学会において学会発表を行った。4)の去勢抵抗性前立腺がんの解析は現在準備を行っており、実際の解析には至っていない。以上のことからほぼ研究実施計画の通り(1-3)に平成23年度の研究は達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
1)前立腺癌の標的遺伝子のさらなる探索:これまで他の癌においてmiR-1とmiR-133aは注目されているマイクロRNAであるが、機能が未知のmiRも多数存在している。前立腺癌において、さらに重要な役割をすると思われるmiRを同定し機能解析を行うことが第1の方針である。2)下流遺伝子の網羅的解析:前立腺癌に発現するmiRのプロファイルから得られたmiRの下流の遺伝子の発現支配をバイオインフォマティクスの手法を用いて広く解析し、多数のmiRからコントロールされる、前立腺癌の発癌メカニズムを解明するのが第の目的である。3)去勢抵抗性前立腺癌におけるmiRの発現解析:前立腺癌は再燃し、治療に抵抗性となり死に至る疾患である。再燃のメカニズムは未だあきらかでない。miRというあたらしい概念のRNAが、再燃のメカニズムの一部を担っている可能性があり、それを明らかにすべく実際の去勢抵抗性前立腺癌の臨床検体を用いて発現解析を行う。平成23年度は、発現解析を中心に研究し、RT-PCRに使用する試薬などを購入した。平成23年後は、去勢抵抗性前立腺癌におけるmiRの発現解析の費用を見込んでいたが、現在準備を進めている段階であり、その予定費用は24年度に繰り越すこととなった。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究計画1)標的遺伝子PNPの前立腺癌における機能解析2)去勢抵抗性前立腺癌におけるmiRNAの発現解析3)マウスモデルを用いたin vivoの実験系により、miRNAの機能的役割を解析する。23年度に予定した、去勢抵抗性前立腺癌(死亡例)におけるmiRNAの発現解析(1検体約50万円)は、現在準備中であり、24年度分として使用する予定とした。その他、RNAの抽出液や、保存液、mRNAの発現を測定する際に使用する試薬など、高な実験試薬が多いため、それらに使用する予定である。また、網羅的な発現遺伝子解析を行う場合は多額の費用が見込まれる。また、次年度も海外発表や論文投稿を予定している。英文校正や投稿費、海外学会参加費などにも使用する予定である。
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