研究課題/領域番号 |
23592358
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井川 靖彦 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (40159588)
|
研究分担者 |
相澤 直樹 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80595257)
本間 之夫 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40165626)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 求心性神経伝達 / 下部尿路機能障害 / 薬物療法 / 過活動膀胱 / 間質性膀胱炎 |
研究概要 |
1.TRPV4刺激薬およびTRPA1刺激薬はそれぞれ膀胱内注入すると頻尿を惹起した。一方,TRPV4阻害薬およびTRPA1阻害薬はそれぞれ静脈内投与しても膀胱内圧測定上影響を及ぼさなかったが,TRPV4刺激薬またはTRPA1刺激薬の膀胱内投与によって誘発される頻尿をそれぞれの阻害薬は抑制した。2.L-arginine, PDE type5阻害薬(sildenafil),beta3AR作動薬(mirabegron)について,膀胱伸展刺激受容を担うAδ線維およびC線維の神経活動に与える直接効果を検証したところ,L-arginineとsildenafilは,Aδ線維およびC線維の両神経活動を抑制したのに対して,mirabegronは,主に,Aδ線維の神経活動を抑制する効果があることが判明した。さらに,TRPV4刺激薬を膀胱内投与すると,capsaicin非感受性C線維を選択的に活性化することが明らかになった。3.5週齢の雄マウスに,約20週間(4-5か月)の高脂肪食摂餌したところ,普通食を投与した対照群と比べて,体重増加・高血糖・高脂血症を誘発したが,下部尿路機能へ与える影響は軽微であった。4.潰瘍型間質性膀胱炎(IC)のバイオマーカーの候補として期待されるCXCR3 binding chemokine(CXCL10)およびTNFSF14について,その尿中濃度を,潰瘍型IC患者群,非潰瘍型IC患者群,健常対照群で比較したところ,尿中CXCL10は,潰瘍型IC群において,有意に増加しており,症状の重症度とも相関することが示された。他方,TNFSF14は,IC患者群(潰瘍型,非潰瘍型ともに)で有意に増加していたが,症状重症度とは相関を認めなかった。5.難治性膀胱蓄尿機能障害(間質性膀胱炎および過活動膀胱)の患者に対して,ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法を行い,その有用性を検証中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.治療標的のスクリーニング: TRP ion channels のうち,TRP V4とTRP A1についてはスクリーニングが済み,24年度に予定していた膀胱求心性神経活動解析へ既に移行して検討中である。当初,TRP V2もスクリーニングの対象として挙げていたが,選択的刺激薬や阻害薬が入手できないため検討できていない。2.L-arginine, PDE type5阻害薬およびbeta3AR作動薬の膀胱求心性神経活動へ効果解析は予定通り終了し,学会発表し,論文作成中である。3.メタボリック症候群に伴う下部尿路機能障害の解析については,マウスでの解析を予定通り終了したが,想定した下部尿路機能障害を認めなかったため,他の病態モデルによる検討が必要と考えられた。4.間質性膀胱炎のバイオマーカーの探索的研究は予定通り進行して,瘍型間質性膀胱炎のバイオマーカーの候補とし尿中CXCL10が期待しうることがわかった。5.難治性膀胱蓄尿機能障害患者に対するボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法の臨床的有用性の検討については,ほぼ予定通り進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
1.膀胱求心性神経活動解析については,当初の予定より進展しているため,今後は,TRPA1刺激薬・阻害薬に加えて,α1アドレナリン受容体阻害薬(silodosin), TRPM8阻害薬などの効果を検討する予定である。2.メタボリック症候群に伴う下部尿路機能障害の病態解析と治療標的の探索については,2型糖尿病モデルラットであるGoto-Kakizaki(GK)ラットを用いて,経時的に下部尿路機能の変化を追跡し,その病態を解析する予定である。3.潰瘍型間質性膀胱炎のバイオマーカーと期待できるCXCL10について,水圧拡張術やボツリヌス毒素注入療法の前後で測定し,臨床効果との相関の有無を検証し,治療効果を反映するバイオマーカーになりうるか否かを検討する。4.ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は,:前年度に引き続いて,その臨床効果を継続検討していく予定である。同時に,治療前に採取した膀胱粘膜標本を免疫組織化学的および分子生物学的手法を用いて解析し,治療反応群と不応群との間での違いを検証する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
備品の購入予定はなく,消耗品(物品費)として,ラット,薬品,カテーテル類を60万円,学会発表・研究助言指導のための出張旅費を50万円を予定している。
|