研究課題/領域番号 |
23592358
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井川 靖彦 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40159588)
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研究分担者 |
相澤 直樹 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80595257)
本間 之夫 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40165626)
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キーワード | 求心性神経活動 / 膀胱 / 加齢 / 排尿筋低活動 / 間質性膀胱炎 |
研究概要 |
1.PDE-5 阻害薬であるtadarafilは、ラット膀胱伸展刺激受容求心性神経活動を抑制し、さらに、acroleinによって誘発されるこれらの求心性神経活動の活性化をも抑制しうることを明らかにした。 2.新規過活動膀胱治療薬のβ3アドレナリン受容体作動薬Mirabegronは、ラット膀胱伸展刺激受容求心性神経のうち、特にAδ線維の活動を抑制し、この抑制は、膀胱微小収縮の抑制と同期して起こることから、Mirabegronは、膀胱の微小収縮を抑制することにより、膀胱伸展刺激受容Aδ線維の活動性を抑制することが示唆された。 3.TRPA1チャンネルはラット排尿反射の生理的な調節には直接関与しないが、膀胱伸展刺激受容一次求心性神経のうち、Aδ線維とC線維の両者の活動を促進する作用があり、TRPA1チャンネルが病的に活性化されると膀胱伸展刺激受容求心性機構が促進され、過活動膀胱や過知覚膀胱(Hypersensitive bladder)を生じる要因となることが示唆された。 4.2型糖尿病モデルラットであるGoto-Kakizaki(GK)ラットの下部尿路機能の変化を経時的に追跡した結果、10週齢では機能的変化を認めなかったが、46週齢では、膀胱求心性神経伝達速度の低下、膀胱容量の増大(膀胱知覚低下)、排尿時膀胱収縮圧の低下、膀胱排尿筋のカルバコールに対する収縮反応の低下(排尿筋低活動)を認めた。 5.潰瘍型間質性膀胱炎患者の膀胱粘膜において、mRNAレベルで、TRP A1, TRPM2, TRPM8, TRPV1, TRPV2, ASIC1, NGF およびCXCL9の発現が増加していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.治療標的のスクリーニング: TRP ion channels のうち,TRP V4とTRP A1についてはスクリーニングが済み,膀胱求心性神経活動解析も済み、論文化した。さらに、当初スクリーニングの対象として挙げていなかったTRP M8について検討中で、予定以上に進行している 2.膀胱求心性神経活動解析による評価:TRP V4、TRP A1、PDE type5阻害薬およびbeta3AR作動薬の膀胱求心性神経活動へ効果解析を終了し,学会発表し,論文化した。予定より進んでいる状況である。 3.排尿筋低活動に対する治療標的の探索:メタボリック症候群に伴う下部尿路機能障害の解析については,マウスでの解析を予定通り終了し、論文化した。さらに、2型糖尿病モデルラットであるGoto-Kakizaki(GK)ラットが、46週齢で膀胱知覚低下及び排尿筋低活動を示すことを明らかにしたが、排尿筋低活動モデルとして治療標的検索に利用するのは長期間を要するため不向きと考えられた。今後も治療標的の探索に利用しうる簡便な排尿筋低活動モデルを確立する必要がある。 4.間質性膀胱炎のバイオマーカーと治療標的の探索:当初の予定通り、研究は進捗して、瘍型間質性膀胱炎のバイオマーカーの候補として尿中CXCL10が有望視されたが、症状の重症度や治療効果との相関が乏しいことが推量された。 5.難治性膀胱蓄尿機能障害患者に対するボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法の臨床的有用性の検討については,ほぼ予定通り進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.膀胱求心性神経活動解析については,当初の予定より進展しているため,今後は, alpha1阻害薬(silodosin), TRPM8阻害薬などの効果を検討する予定である。 2.排尿筋低活動に対する治療標的の探索については、新たな排尿筋低活動モデルを確立すべく、末梢神経障害によるモデル動物の作成を試みる予定である。 3.間質性膀胱炎のバイオマーカーと治療標的の探索に関しては、潰瘍型間質性膀胱炎で発現が増強していたTRPチャンネルを中心に、慢性膀胱炎動物モデルでの発現や薬理学的実験を行い、その意義を検討する。 4.膀胱粘膜ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は,:前年度に引き続いて,その臨床効果を継続検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
備品の購入予定はなく,消耗品(物品費)として,ラット,薬品,カテーテル類を60万円,学会発表・研究助言指導のための出張旅費として50万円を予定している。
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