研究課題/領域番号 |
23592359
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
秋野 裕信 福井大学, 医学部, 准教授 (90159335)
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研究分担者 |
横山 修 福井大学, 医学部, 教授 (90242552)
渡邉 望 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (80572429)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 下部尿路閉塞 / 膀胱粘膜 / 自律収縮 / アデノシン3リン酸(ATP) / プロスタグランディンE2(PGE2) |
研究概要 |
下部尿路閉塞(BOO)ラット膀胱からin-vivoで膀胱内腔に放出されるATPとPGE2量を測定した。in-vitroではBOOで膀胱条片からのATP・PGE2放出量は低下していたが、in-vivoではATP・PGE2の膀胱腔内への放出量は増加した。膀胱自律収縮が背景にあると想定される膀胱内圧測定での排尿に至らない膀胱収縮(NVC)は膀胱容量の増加に伴い亢進し、ATP・PGE2放出量も膀胱容量の増加に伴い増加した。この結果からin-vivoで神経系がintactであることがATP・PGE2放出量の増加に関連すると推察した。α1ブロッカーは尿道知覚C線維を抑制することが示唆されていることからα1ブロッカーであるナフトピジルのATP・PGE2放出量への影響をin-vivoで検討した。ナフトピジルによりATP・PGE2放出量は低下し、NVCは抑制された。そしてレジニフェラトキシン(RTX)皮下投与による全身のC線維の脱感作はATP放出量を減少させたが、PGE2放出量は増加し、NVCは亢進した。またNVCは亢進したのにも関わらず膀胱容量は増大した。これらの一見矛盾した結果は、α1ブロッカーは尿道のC線維のみを抑制するが、RTXは尿道だけでなく膀胱のC線維をも抑制することによると考えられた。RTXによる膀胱知覚の鈍麻が膀胱の過伸展をもたらし、その過度の伸展によりNVCが亢進したものと推察した。そして、RTX投与BOO膀胱でのATP放出量の低下、PGE2放出量の増加は膀胱粘膜から放出されるPGE2がBOOに伴うNVCの発生に関連することを示唆した。BOOラット膀胱におけるC-Kit、vimentin、α-smooth muscle actinの免疫蛍光抗体法を実施した。入手したC-kitに対する抗体では膀胱間質細胞が存在すると推定される部位での陽性所見は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたin-vivo実験は十分に遂行できたが、実験計画書に記したin-vitroでの初代培養細胞を用いた実験は実施できていない。その理由は細胞の同定に不可欠な免疫蛍光抗体法の実験結果が現在のところ不良に終わっていることによる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、ラット膀胱間質細胞に陽性所見を示すC-Kitに対する抗体を用いた研究が報告されたことから、その抗体を用いて実験計画書にあるin-vitroでの尿路上皮、間質細胞の初代培養細胞を用いた実験を開始する。 昨年度の研究結果から膀胱知覚低下がNVCの亢進をもたらすことが強く示唆されたことから、BOOに伴う知覚神経障害をもたらす血流障害・虚血再灌流による酸化ストレスを抑制することにより、in-vitro膀胱条片の自律収縮とin-vivoでのNVCの変化、ならびにATP、PGE2放出量に関して検討する。 最新の情報ではアセチルコリン(ACh)を簡易に測定できるキットが入手可能となったことから、ATP、PGE2に加えてAChに関しても検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物(ラット)と飼育に必要な消耗品、細胞のcharacterizationに不可欠な抗体、免疫蛍光抗体法・免疫組織学的検討に必要な2次抗体ならびに消耗品、細胞培養に必要な機器と消耗品、膀胱内圧測定に必要な消耗品、ATP・PGE2・AChの測定キットを研究費で購入する。 研究結果を国内外の学会で報告するために研究費に計上した旅費を使用する予定である。
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