研究課題/領域番号 |
23592359
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
秋野 裕信 福井大学, 医学部, 准教授 (90159335)
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研究分担者 |
横山 修 福井大学, 医学部, 教授 (90242552)
渡邉 望 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (80572429)
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キーワード | 下部尿路閉塞 / 膀胱粘膜 / 自律収縮 / アデノシン3リン酸(ATP) / プロスタグランディンE2(PGE2) |
研究概要 |
前年度の研究で、下部尿路閉塞(BOO)ラット膀胱で認められる膀胱内圧測定で排尿に至らない膀胱収縮(NVC)は膀胱容量の増加に伴い亢進し、尿路上皮からのATP・PGE2放出量の増加と関連することを明らかにし、NVC抑制作用を有するα1ブロッカーであるナフトピジルがATP・PGE2放出量を抑制することを明らかにした。 今年度は尿路上皮細胞におけるATP放出に関して重要な役割を果たすTRPV1の脱感作がBOOラットのNVCやATP・PGE2放出量へ及ぼす影響について検討した。レジニネラトキシン(RTX)によるTRPV1脱感作は膀胱容量の増大に伴い、NVCを増強させた。ATP放出量はRTXによるTRPV1脱感作により減少する傾向がみられたが、PGE2放出量はATPと異なり増加の傾向にあった。α1ブロッカーのナフトピジルはTRPV1を脱感作したラットにおいてもNVCを抑制し、尿路上皮からのATP放出には影響しなかったが、PGE2放出量を有意に減少させた。 これらの結果はBOOラットにおけるNVCの発生にATPやTRPV1チャンネルは必須ではないことを意味するが、この知見はまったく新しく、これまでに報告されていない。PGE2はTRPV1脱感作によるNVCの亢進と共に尿路上皮からの放出量が増加する傾向にあり、α1ブロッカーはNVCと共にPGE2放出を抑制したことから、BOOに伴うNVCの発生には尿路上皮由来のPGE2が関与することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたin-vivo実験は十分に遂行でき、さらには研究計画を立案した際よりもin-vivo実験で膀胱粘膜の自律収縮への関与の解明がin-vivo実験で進んだため、研究計画書に記したRT-PCR等の実験を遂行する時間がなかった。
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今後の研究の推進方策 |
PGE2産生に関与するcyclooxygenase、PGE2受容体であるEPのRT-PCRを膀胱上皮、筋層に分けて定量する。また免疫組織学的研究を推進する。 今までの研究結果から膀胱知覚低下がNVCの亢進をもたらすことが示唆されたことから、BOOに伴う知覚神経障害をもたらす血流障害・虚血再灌流による酸化ストレスを抑制することにより、in-vitro膀胱条片の自律収縮とin-vivoでのNVCの変化、ならびにATP、PGE2放出量に関して検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物(ラット)と飼育に必要な消耗品、免疫蛍光抗体法・免疫組織学的検討に必要な2次抗体ならびに消耗品、RT-PCRに必要な機器と消耗品、膀胱内圧測定に必要な消耗品、ATP・PGE2・AChの測定キットを研究費で購入する。そして、研究結果を国内外の学会で報告するために研究費に計上した旅費を使用する予定である。
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