研究課題
本年度は脂肪幹細胞が尿道括約筋の再生を行うことが可能であるかを検証した。10週齢雌NZW種のウサギの下腹部脂肪組織から脂肪細胞を採取した。7日間初代培養を行い、接着伸展した細胞を脂肪由来細胞とした。一方で、移植1週間前に、ウサギ膀胱頚部の内尿道括約筋を中心とした組織に液体窒素を20秒間噴射し凍結傷害を与えた。損傷を与えてから1週間後、培養によって得られた脂肪由来細胞(1.0x106 cell)を、傷害を与えた膀胱頚部に自家移植した。対照群には、凍結傷害部に細胞を含まない溶液を注入した。移植後1、2週目に尿漏出圧(LPP)測定を行った。移植直前の損傷を受けたウサギのLPP値は、偽手術を受けたウサギのLPP値よりも有意に低下した。細胞移植1週間後のLPP値は、細胞移植群と対照群には差がなかった。しかし、細胞移植2週後、細胞移植群のLPP値は、対照群と比較して高い傾向を示した。膀胱頚部の内尿道括約筋を中心とした組織に凍結傷害を与えてLPPが低下したモデルに対して、傷害部への自己脂肪由来細胞を移植するとLPP値が高くなる傾向が認められ、尿道括約筋の再生に脂肪幹細胞は有用であることを示すことが可能であった。
2: おおむね順調に進展している
ウサギの脂肪細胞を培養したが、採取部位によって、幹細胞を純化させるのに違いがでることが明らかになったことは、今後の研究の進展を大きく左右した。つまり、ウサギにおいては、皮下の脂肪組織を使用すると雑菌の繁殖が多くなり、幹細胞の採取に大きな障害がでることがわかった。いろいろな部位から脂肪組織を採取して検証したが、腹腔内の余剰脂肪組織は、ほぼ無菌的に採取することが可能であり、幹細胞の純化培養に適していることが判明した。この培養によって、障害を与えた尿道括約筋への脂肪幹細胞移植がスムースに行うことができた。これらの成果により、現在のところ、概ね順調に進展していると考えられる。
今後は、平成23年度までに行った骨髄幹細胞を利用した場合の尿道括約筋の再生法と、平成24年度に行った脂肪幹細胞を利用した場合の尿道括約筋の再生法の比較検討が主体となる。機能的、組織学的な再生効率の検証、および細胞を採取することによる個体への侵襲度の差の検証および経済的効率性についての検証も行う予定である。
該当なし
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