本年度は、ヒトiPS細胞にレチノイン酸(Retinoic acid:RA)を添加することにより、平滑筋細胞への分化させる方法を確立した。RA添加後7日目-10日目にはにはRT-PCRにて平滑筋に特異的に発現するマーカーであるSmooth Muscle Actin (SMA)の発現を安定的に確認することが可能となった。Myocardin,Myosin Heavy Chain (MHC)などのSMA以外の平滑筋マーカーを免疫組織的染色により確認することにより,ヒトiPS細胞の平滑筋への分化誘導の確実性を証明することが出来た。現在も、ヒトiPS細胞を用いた平滑筋細胞誘導実験を継続して実施している。しかしながら,iPS細胞を患部に直接移植する方法では,機能を回復させるだけの十分量の平滑筋細胞に分化させることができず,その効率性に問題がある。我々はiPS細胞から順行性に自律増殖能を有する尿路平滑筋幹細胞(平滑筋細胞再生に必要な,自律的自己増殖能を持つ幹細胞)の樹立を目指し,研究を遂行中である。
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