研究課題/領域番号 |
23592371
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
梶岡 俊一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員(特任准教授) (90274472)
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研究分担者 |
中山 晋介 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30192230)
米満 吉和 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40315065)
高橋 富美 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50274436)
松田 美穂 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40291520)
関 成人 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 特別研究員 (90294941)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 膀胱平滑筋 / トロポニンT / 低活動膀胱 |
研究概要 |
本研究の目的は、未だ不明な点の多い平滑筋の収縮調節の分子機構を、膀胱平滑筋での心筋型トロポニンTの発現の生理学的意義を探りながら、このトロポニンTを活用して平滑筋にトロポニンシステム収縮システムを新規に構築し、機能不全に陥った低活動膀胱の機能の改善・復活を目指す臨床応用の基盤的研究とすることである。トロポニンは、横紋筋である心筋及び骨格筋に発現し、収縮機構の中心的な役割を果たすが、トロポニンT、トロポニンIとトロポニンCのサブユニット3量体から形成され、各々に心筋型、骨格筋速筋型、骨格筋遅筋型があるので(トロポニンCでは心筋型と骨格筋遅筋型を共有)計8種類のサブユニットが報告されている。平成23年度の現在までに至る分子生物学的検討では、ヒト膀胱排尿筋におけるトロポニンサブユニットの全ての蛋白レベルので発現を確認すべく、Western Blotting法を施行した。その結果、トロポニンT心筋型のみならず、骨格筋速筋型、骨格筋遅筋型とすべてのタイプのトロポニンTが発現していることを発見した。しかしながら、トロポニンIとトロポニンCについてはどの型のサブユニットも発現していないことを確認した。生理学的には、In vivoの実験ではマウスの排尿動態を記録することが可能となったが、心筋型トロポニンTヘテロノックアウトマウスの排尿動態はワイルドタイプと比較して、有意な変化はなかった。In vitroの実験では、心筋型トロポニンTヘテロノックアウトマウス膀胱平滑筋を使用して、収縮張力を測定したが、低濃度のCaでは、収縮力の発生に有意差があることを認め、トロポニンTがなんらかの形で平滑筋の収縮機構にも関与していることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度では、ヒト膀胱排尿筋で、全てのトロポニンサブユニットのWestern Blottingを施行し、心筋型トロポニンTだけでなくすべてのトロポニンTが発現していることを発見した。また、In vivoでは、今までは、マウスの排尿活動はその一回排尿量が少なく、記録が困難であったが、当研究室でマウスの排尿活動を記録することが可能になり、心筋型トロポニンTノックアウトマウスでは、排尿活動に有意な差は認められなかったが、今後も様々なノックアウトあるいはノックインマウスの排尿活動を記録し、In vivoでの膀胱平滑筋の収縮機構を探ることができる。また、心不全治療薬に用いられているカルシウムセンシタイザーであるレボシメンダンは、ヒト排尿筋ではカルバコール刺激による収縮を抑制したのに対し、マウス排尿筋では収縮力の増強を認め、同じ平滑筋でも異なる収縮メカニズムを有していることが考えられた。以上のように、分子生物学的な検討にも、In vivoさらにIn vitroを含めた生理学的な検討においても、本研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平滑筋におけるトロポニンTが収縮機構にどのように関わるかを、calmodulinやcalponin, caldesmonといった平滑筋特有の収縮蛋白との関連を、分子生物学的手法、特にWestern Blotting法や免疫沈降法などを用いて検討する。ヒト膀胱平滑筋細胞の培養を確立しており、またコラーゲンジェルリングを用いた平滑筋培養細胞の張力測定も可能であるので、トロポニンI,あるいはトロポニンCをヒト膀胱平滑筋培養細胞へトランスフェクション、すなわちIn vitroレベルでの平滑筋のトロポニンシステムを構築して、その張力を測定し評価する。 _トロポニンIまた、あるいはトロポニンCのノックインマウスの完成を急ぎ、トロポニンIまた、あるいはトロポニンCの発現している各平滑筋組織の生理学的機能の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
トロポニンIまた、あるいはトロポニンCのノックインマウス、さらに可能であればトロポニンT過剰発現ノックインマウスの作製の諸経費として80万円、実験動物購入/維持費として20万円、試薬/諸設備維持費として30万円、学会旅費/論文校正費/別冊代として20万円の計150万円の予定
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