研究課題/領域番号 |
23592379
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中根 裕信 鳥取大学, 医学部, 助教 (10304205)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | DNA修復欠損マウス / 精子形成 / 精巣幹細胞 / ゲノム不安定性 |
研究概要 |
色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)は、日光紫外線による高頻度の皮膚癌発生と進行性の精神神経症状、さらに精巣発育不全を臨床的特徴とし、ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair:NER)に異常をもつ遺伝疾患である。これまで我々は、A群色素性乾皮症遺伝子(Xpa遺伝子)を欠損したXpa遺伝子欠損マウス(Xpaマウス)の解析から、このマウスがXP患者と同様に精子形成不全を示しXPの病態モデルとなることを明らかにした。本研究は、精子ゲノムの質の低下を生じる精巣病態を解明するために、Xpaマウス精巣変性状態での精子形成を継続する精細管に着目し、Xpaマウス精巣と精子の解析を行う。これまでの解析から、Xpaマウス精巣の精巣幹細胞が、精巣変性状態[ゲノム不安定性]に適応かつ生存し、ゲノムの質は低下( DNA損傷を持ったまま)しても精子形成を継続できる病態という仮説を持っている。これら精巣変性状態下の精子形成は、正常とは質的に異なる精巣幹細胞による可能性があり、本研究は上記仮説を検証することを目的とする。上記目的を達成するために、本年は以下の実験を行った。既に得た3,6,12ヶ月令Xpaマウス精巣のアレイの結果を基に、種々のDNA修復系、checkpoint系、epigenetic関連、精原細胞・Sertoli細胞の特異的発現等の遺伝子発現をRT-PCR(reverse transcription PCR), Real time PCR等で確認を試みたが、実験条件の設定が難しく結果を得ていない。また、Xpaマウス精巣病変ごとの精細管RNAの調整も、各精細管の選別および解析用の質の高いRNAの調整の実験条件を検討している。上記の実験条件の結果を得て仮説の検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既に得た3,6,12ヶ月令Xpaマウス精巣のアレイの結果を基に、種々のDNA修復系、checkpoint系、epigenetic関連、精原細胞・Sertoli細胞の特異的発現等の遺伝子発現をRT-PCR(reverse transcription PCR), Real time PCR等で確認を試みたが、実験条件の設定が難し、結果を得ていない。また、Xpaマウス精巣病変ごとの精細管RNAの調整も、各精細管の選別および解析用の質の高いRNAの調整の実験条件を検討している。実験の遅れは、上記の理由による。
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今後の研究の推進方策 |
精子ゲノムの質の低下を生じる精巣病態を解明するため、以下の解析を行う。1)Xpaマウス精子と精子ゲノムの解析:各時期・各条件の精子を運動性、奇形性をsperm sorter [遠心によるDNA断片化防止]、Sperm chromatin dispersion(SCD) test(DNA切断割合)、Tunnel法等で検索し、DNA損傷抗体で精子DNAの損傷も確認する。特に精巣の未変性期と変性のある時期で、精子ゲノムの質的な違いの有無を検討する。2)精巣の遺伝子発現の解析(epigeneticな変化も含む):Xpaマウス精巣病変ごとのDNA修復異常・幹細胞機能不全を検索するため、各時期精巣の精細管RNAを調整し、DNA microarrayにより遺伝子発現を調べる。既に得た3,6,12ヶ月令Xpaマウス精巣のアレイの結果を基に、種々のDNA修復系、checkpoint系、epigenetic関連、精原細胞・Sertoli細胞の特異的発現等の遺伝子発現をRT-PCR(reverse transcription PCR), 免疫組織(IHC,精細管全体を用いても実施), in situ hybridization (ISH), Real time PCR等で確認し、精巣変性の病態を理解する。特に、各精巣病変での遺伝子発現は、これまでの精巣全体の解析では困難なため、実体顕微鏡下で精細管を観察し、変性している精細管(細く薄い精細管)と精子形成を行っている精細管(太く厚い精細管)を識別・採取し上記の解析を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、他の経費でマウスの飼育費等が支出できたためである。マウスの飼育費および上記の今後の研究の推進方策にあるDNAマイクロアレイ実施料、試薬、抗体等に支出予定である。
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