研究課題/領域番号 |
23592379
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中根 裕信 鳥取大学, 医学部, 助教 (10304205)
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キーワード | DNA修復欠損マウス / 精子形成 / 精巣幹細胞 / ゲノム不安定性 |
研究概要 |
色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)は、日光紫外線による皮膚癌発生と進行性で重篤な神経症状、さらに精巣発育不全を臨床的特徴とし、ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair:NER)に異常をもつ遺伝疾患である。これまで我々は、A群色素性乾皮症遺伝子(Xpa遺伝子)を欠損したXpa遺伝子欠損マウス(Xpaマウス)の解析から、このマウスが精子形成不全を示しXPの病態モデルとなることを明らかにした。本研究は、精子ゲノムの質の低下を生じる精巣病態を解明するために、Xpaマウス精巣変性状態での精子形成を継続する精細管に着目し、Xpaマウス精巣と精子の解析を行う。 これまでの解析から、Xpaマウス精巣の精巣幹細胞が、精巣変性状態[ゲノム不安定性]に適応かつ生存し、ゲノムの質は低下しても精子形成を継続できるのではないかという仮説を持っている。これら精巣変性状態下の精子形成は、正常とは質的に異なる精巣幹細胞による可能性があり、本研究は上記仮説を検証することを目的とする。上記目的を達成するために、本年は以下の実験を行った。既に得た3,6,12ヶ月令Xpaマウス精巣のアレイの結果を基に、種々のDNA修復系、checkpoint系、epigenetic関連、精原細胞・Sertoli細胞の特異的発現等の遺伝子発現をRT-PCR(reverse transcription PCR), Real time PCR等で確認を試み結果を得た。現在、精巣組織で免疫染色等の方法で上記の結果を確認している。また、3,6ヶ月令Xpaマウス精巣の種々の精細管病変と2本鎖DNA切断により生じる損傷の分布を検討したが、対照群との差は見られなかった。さらに上記の実験の結果を得て仮説の検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既に得た3,6,12ヶ月令Xpaマウス精巣のアレイの結果を基に、種々のDNA修復系、checkpoint系、epigenetic関連、精原細胞・Sertoli細胞の特異的発現等の遺伝子発現をRT-PCR(reverse transcription PCR), Real time PCR等で確認を試み結果を得つつあるが、免疫染色等の方法で上記の結果の確認をとる実験が遅れている(適切な抗体の選定、適切な実験条件の設定等)。
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今後の研究の推進方策 |
精子ゲノムの質の低下を生じる精巣病態を解明するため、以下の解析を行う。 1)Xpaマウス精子と精子ゲノムの解析:各時期・各条件の精子を運動性、奇形性をsperm sorter [遠心によるDNA断片化防止]、Sperm chromatin dispersion(SCD) test(DNA切断割合)、Tunnel法等で検索し、DNA損傷抗体で精子DNAの損傷も確認する。 2)精巣の遺伝子発現の解析(epigeneticな変化も含む):Xpaマウス精巣病変ごとのDNA修復異常・幹細胞機能不全を検索するため、各時期精巣の精細管RNAを調整し、DNA microarrayにより遺伝子発現を調べる。既に得た3,6,12ヶ月令Xpaマウス精巣のアレイの結果を基に 、種々のDNA修復系、checkpoint系、epigenetic関連、精原細胞・Sertoli細胞の特異的発現等の遺伝子発現をRT-PCR(reverse transcription PCR), 免疫組織, in situ hybridization (ISH), Real time PCR等で確認し、精巣変性の病態を理解する。また、精巣の変性過程の細胞を透過型電顕でも同時に検索する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、すでに得たアレイの結果をRealtime-PCRや免疫染色等で確認することが遅れたためである。マウスの飼育費および上記の今後の研究の推進方策にあるDNAマイクロアレイおよびRealtime-PCRの実施料と試薬、抗体等に支出予定である。
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