研究課題
本研究の目的は根治的前立腺摘除術後のラットモデルにおいて加齢がいかに海綿体神経(副交感神経)損傷後の機能回復の低下につな がるかのメカニズムを明らかにするとともに、将来的に高齢男性における海綿体神経損傷の早期機能回復を促進ことである。神経損傷後の勃起能回復は年齢によって異なることが、臨床上明らかになっている 。これまで我々は若年モデルと加齢モデルの雄ラットを用 い、海綿体神経損傷後の勃起能を骨盤神経電気刺激による海綿体内圧測定にて評価することができた。また、これまでに加齢に伴い骨盤神経節における海綿体神経特異的な神経栄養因子であるNeurturinの受容体発現が低下することを示してきた。そして、若年ラットにおいてパートナーを頻回に交代させるクーリッジ効果を狙った共棲モデ ルで勃起能回復が促進する結果が得られた。数種の植物エキス複合製剤であるエビプロスタットには抗炎症作用があることが知られている。 前年度、同薬剤の海綿体神経機能回復に与 える影響について検討を行った。術後4週目でラット海綿体神経の電気刺激による勃起誘発により海綿体内圧/血圧(ICP/BP)測定を行っ たところ、海綿体神経損傷前よりエビプロスタットを投与した群で有意な勃起能回復を認めた。エビプロスタットを術前から内服することで海綿体神経損傷後の勃起能障害 は有意に改善し、本薬剤による副作用は軽微で高齢者にとっては有用なリハビリ補助薬となる可能性がある。Neurturinの受容体発現を検討したところ、エビプロスタット群では骨盤神経節におけるNeurturin受容体GFRa-2の発現が亢進していることが明らかとなった。今後、海綿体神経の神経栄養因子であるNurturin受容体の加齢による低下を予防するメカニズムについて検討を要するものと考えられた。
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