研究課題/領域番号 |
23592385
|
研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
日下 守 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (40309141)
|
研究分担者 |
星長 清隆 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30229174)
白木 良一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (70226330)
河合 昭浩 藤田保健衛生大学, 医学部, 助手 (00617144)
|
キーワード | 献腎移植 / バイオマーカー / 移植腎予後 |
研究概要 |
献腎移植における移植腎予後と心機能を評価するバイオマーカーの開発を行う目的で、現在まで研究室にて保存した血清を用い、解析を進めた。対象は研究開始時と比較しさらに症例が増加した。対象症例数は心停止下献腎移植27例、生体腎移植29例、脳死下献腎移植4例。移植前、移植後1か月、移植後1年の血清高感度トロポニンTとNT-proBNPをElecsys immunoassay(Roche Diagnostics)を用いて測定した。心イベント発症の有無について比較検討した。移植前の高感度トロポニンTとNT-proBNPは各々44.4±4.9 pg/ml, 2058±321 pg/mlと高値であり、移植後速やかに低下した。。心停止下献腎移植では移植後1か月の高感度トロポニンTとNT-proBNPは各々44.6±5.0 pg/ml, 1670±688 pg/ml と、生体腎移植と比較し、低下が緩徐であった。心イベント発症有の症例では、高感度トロポニンTとNT-proBNPは移植後1ヶ月で各々57.2±6.0 pg/ml, 4793±2742 pg/ml と心イベント発症無の症例と比較し、高値を示した)。心不全マーカーである血清高感度トロポニンTとNT-proBNPは、移植腎機能回復に影響を受けるものの、心イベント発症の有無や、潜在的心疾患のモニタリングを行う上で有用なバイオマーカーである事が示唆された。また、移植腎予後に関するバイオマーカーの候補としてHMGB-1に関する検討を開始し。プレリミナリーデータではあるが、心停止下献腎移植と生体腎移植症例において移植後の変化に差がみられることが判明し継続して解析を進める予定である。本研究の要旨は、本年度の臓器保存生物医学会で発表した。そこで得られた意見をもとに追加して解析を加え、日本泌尿器科学会総会では口演に採択され発表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
献腎移植における心機能を評価するバイオマーカーの開発に関する研究では、高感度トロポニンTとNT-proBNPに関して解析を行い、心イベント発症の有無について比較し検討を既に終了した。今後アジア移植学会と欧州移植学会に抄録を送り、今後論文化を進める予定である。移植腎予後に関するバイオマーカーの候補として新たにHMGB-1に着目し、あらたに検討を進めている。今後検討項目追加を予定し、近日中に検討を終了する予定である。一方移植腎1時間生検を用いたmiRNAに関する発現解析では、献腎移植16例と生体腎移植20例脳死腎移植4例が保存され、一部の解析を終了した。移植腎1時間生検は、ドナー側の摘出前の要素(特に死戦期の変化や摘出までの虚血状態)と、移植後に虚血再灌流障害によって引き起こされる新たな変化の両者を含み、graftのviabilityを判断する新しいツールとして使用できる可能性があり、既に解析を行いさらにmiRNAがターゲットとする遺伝子に関してデータ解析を進めている。全体としての進捗状況として、血清、尿を用いた解析は、献腎移植における心機能を評価するバイオマーカーの検討も終了し、今後は移植腎1時間生検を用いたmiRNA arrayによる解析のターゲット遺伝子の解析と、新たに着目したHMGB-1などおおむね順調に研究計画が順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
献腎移植における移植腎予後を評価するバイオマーカーに関する研究では、L-FABPの論文化を進め、現在投稿中である。新たなバイオマーカーに関する検討としては、引き続き当院の腎臓内科ならびに臓器移植科との共同研究計画が現在進行中であり、血清解析は当科、尿解析は腎臓内科へと発展している。新たな検討項目に関しては開発中の内容を含むため、公表を差し控えるが、新たなバイオマーカーとして発展する可能性がある。献腎移植における心機能を評価するバイオマーカーの開発に関しては、解析が終了し、学会発表での評価を受けたのち論文化を計画している。ただし、昨年検討項目として追加するとした患者の臨床パラメーターとしての心エコー評価は、各々の症例で未だ検討中であり、当院循環器内科の協力を得て、今後症例検体を蓄積し推進していく予定であるが、達成は現時点までは不十分でる。移植腎1時間生検を用いたmiRNAに関する発現解析は、献腎移植16例と生体腎移植20例脳死腎移植4例について、一部の解析が終了した。移植腎1時間生検は、ドナー側の摘出前の要素(特に死戦期の変化や摘出までの虚血状態)と、移植後に虚血再灌流障害によって引き起こされる新たな変化の両者を含み、graftのviabilityを判断する新しいツールとして使用できる可能性があり、既にmiRNA arrayを用いた解析を行いデータ解析をGene Springを用いて進めている。Target遺伝子との解析において既に既存の2万遺伝子に関する遺伝子解析 (Kusaka et al, Cell Transplantation 2009)とのデータ照合については、miRNA遺伝子解析のフュージョン化を進めているが、現時点までで、完了出来ておらず、次年度の課題とし残っている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究の主な費用は、血清と尿に関する研究に関しては保存とこれに伴う消耗物品、検体管理を行うネットワークから独立した研究室パソコン使用維持、ならびにデータ解析に必要なコンピュータソフト(SPSS, Excel)などの使用維持にかかわる費用である。本年度は血清を用いた検体については、引き続き症例数の増加とともに検討項目を追加している。心機能を評価する目的で高感度トロポニンT、NT-proBNPに関する血清解析を行い、本年度はHMGB-1などの新規項目について検討予定である。今後も予備実験を含めてELISAを含む消耗品購入と解析に対する費用が発生すると考えられる。来年度も継続して腎移植1時間生検を用いたmiRNA遺伝子の発現解析を行う。マイクロアレイに関してはRNA抽出に伴う費用と、アレイ購入ならびにハイブリダイゼーションにかかわる費用、スキャン装置ならびに実際に解析を行うソフト(Gene Spring)に関する使用維持費が必要となる。アレイ解析に関しては精度維持のため、一部を受託で賄う可能性がある。また、研究成果に関しては、論文作成の際に必要な英文校正費用や論文投稿費用が発生する本年度はL-FABPに関して今後同様の費用支出が見込まれる。研究成果発表については、現在日本泌尿器科学会に採択され、欧州移植学会とアジア移植学会ならびに日本移植学会に投稿し、採択結果を待っている。研究過程での発表に対しては、質問等研究推進に関して貴重な意見を得る機会となり、今後も継続して学会活動と発表ならびに意見交換を行う予定である。次年度へも研究発展に向けて学会参加、発表、意見交換に関して費用を計上している。
|