研究概要 |
心不全マーカーである血清高感度トロポニンTとNT-proBNPは、移植腎機能回復に影響を受けるものの、心イベント発症の有無や、潜在的心疾患のモニタリングを行う上で有用なバイオマーカーである事が示唆され、日本泌尿器科学会、アジア移植学会そして欧州移植学会で研究内容を口演発表した。移植腎予後に関するバイオマーカーの候補としてHMGB-1に関する検討を行ったところ、移植前の血清HMGB-1は4.3±0.5 ng/mlであった。献腎移植では移植後の変化がPOD1:6.6±0.9, POD2:5.9±0.8, POD3: 5.1±0.7 ng/mlであったのに対し生体腎移植ではPOD1:5.2±0.4, POD2:6.8±0.4, POD3: 5.7±0.4 ng/mlと移植後のピークに相違が認められた。DGF期間の相違による検討ではDGF-SがPOD1:5.9±1.1, POD2:5.1±0.9, POD3: 4.9±1.0 ng/mlに対してDGF-LがPOD1:7.4±1.8, POD2:7.0±1.4, POD3: 4.9±1.2 ng/mlと高い傾向が認められた。さらに移植術直後の検討では献腎移植では9.0±1.0 (p<0.01)と生体腎移植とを比較し有意な上昇を認めた。移植術直後の新たな結果を加えて本年度の日本泌尿器科学会総会ならびに国際移植学会に演題が採択され報告予定である。miRNAに関する検討では献腎移植腎内で発現亢進する17つの遺伝子と発現低下する3つの遺伝子に着目した。詳細はここでは明らかとしないが、結果をもとに継続して血清中のmiRNAの変化に着目し、研究を継続した。現在移植術直後の血清を用いて45サンプルに関してreal time PCRによる定量実験を行っている。具体的には内部標準2遺伝子(rnu44,u6)と13候補遺伝子に解析を絞り、献腎移植ならびに生体腎移植直後の血清中にあるmiRNAと予後相関について検討している。
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