研究概要 |
ヒト無精子症に関連する遺伝子群を同定し、精子形成メカニズム、特に精子形成時の減数分裂過程の異常を解明することを目的にこれまで研究を重ね多くの遺伝子との関連を報告してきた。本年度はノックアウト雄マウスでsynaptonemal complexの形成が阻害され、減数分裂停止による無精子症を呈するHORMAD1遺伝子に着目し、ヒト無精子症におけるHORMAD1遺伝子の役割に関し検討した。減数分裂停止による無精子症患者30例および正常精子形成群80例を対象としてHOMRMAD1遺伝子の異常が認められるかどうか検討を行い、以下の結果が得られた。HORMAD1のmutation解析を施行したところ減数分裂停止による無精子症患者にmutationは認められなかったが、exon 3, 8, 10領域に3つのcoding single nucleotide polymorphism(SNP1,2,3)を同定した(c. 163A>G, c. 501T>G, 918C>T)。Genotypeおよびアレルの出現頻度の解析を行ったところ,減数分裂停止による無精子症患者とコントロール群の間にSNP1とSNP2において有意差が認められ(p<0.05)、HORMAD1遺伝子はヒト精子の減数分裂に関与することを明らかにした。今後はHORMAD1遺伝子の精子形成に関与するメカニズムを明らかにするために機能解析に取り組むとともに、精子形成に関与する新たな遺伝子群を同定し機能解析を行う予定である。
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