研究概要 |
mTOR経路関連タンパクであるAMPK, Akt, S6K1およびリン酸化AMPK, Akt,S6K1の発現量を子宮筋腫と正常子宮筋で比較したが、組織でも初代培養細胞においても有意な差はみられず、子宮筋腫ではmTOR経路の活性化は起こっていないと考えられた。 次に、子宮筋腫におけるHypoxia inducible factor-1 alpha(HIF1α)の発現を検討した。初代培養子宮筋腫細胞と子宮筋細胞を20%酸素培養下(Normoxia)と1%酸素培養下(低酸素)で培養し、HIF1αmRNAとタンパクの発現を比較検討した。その結果、低酸素により子宮筋腫、正常子宮筋ともにHIF1αのmRNA発現が低下したが、子宮筋腫細胞では、発現低下の程度が軽度であった。一方HIF1αのタンパク発現量は、子宮筋腫、正常筋ともに低酸素により変化しなかった。以上より、子宮筋腫の低酸素に対する反応にはHIF1α以外の因子が関与していると考えられた。 最後に子宮筋腫異種移植モデル(xenograftモデル)を作製した。重症免疫不全マウスである、NOD/SCIDマウスの腎被膜下に子宮筋腫細胞あるいは正常子宮筋細胞からなる移植片(xenograft)を挿入し、外因性にエストロゲンとプロゲステロンを投与し、4~8週後にxenograftを回収し評価した。その結果、50%以上の確率で、腎被膜下に筋腫様組織の再構築が起こった。このxenograftはエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体の発現を保ち、エストロゲン、プロゲステロン依存性に増大し、子宮筋腫組織に特徴的な発現を示す遺伝子発現を保持していた。以上より、このxenograftモデルは、ヒト子宮筋腫の疾患モデルとして妥当であると考えられた。
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