研究課題
妊娠における免疫介入脂質メディエーターの生理的・病理的意義に関する研究として、特にオートタキシン(ATX)/リゾリン酸(LPA)系とオメガ3/オメガ6脂肪酸(ω3/ω6)系とに注目し、また妊娠病理としては妊娠高血圧症候群(PIH)と早産とに焦点を当てて研究した。ATX/LPA系については、まず母体血中ATX濃度とLPA濃度が妊娠週数とともに増加すること、LPA受容体のLPA-3が胎盤において、Cytotrophoblast(CT)以外のtrophoblastに発現されていることが分かった。また、妊娠高血圧症候群(PIH)において胎盤のATX発現は正常妊娠に比べ、低下していた。この傾向は、早発型で顕著であった。一方、受容体LPA-3の胎盤における発現はPIHで増加している傾向が認められた。受容体LPA-3に対する特異的アゴニストを使用した研究により、LPAが受容体を介し、trophoblastのCyclooxygenase-2 (COX-2)発現に影響していることも分かった。以上より、ATX/LPA系が炎症などの細胞機能を調節して妊娠の生理に関与し、その異常がPIH等の妊娠合併症のの病理と関連していることが示唆された。ω3/ω6系については、ω6をω3に体内で変換しω3優位な状態にあるマウス(FAT-1マウス)とその野生型マウスの子宮頸部にlipopolysaccharide を注射するマウス早産モデル実験を行い、ω3/ω6バランスがω3優位になると早産が予防されること、その過程でFAT-1マウスにおいて、子宮頸部へのマクロファージ浸潤が低下していること、子宮体部筋層内の炎症性サイトカインnterleukin(IL)-6およびiIL-1β産生が低下していること、ω3系代謝産物の18-hydroxyeicosapentaenoate (18-HEPE)濃度が上昇していることを証明した。18-HEPEの代謝産物であるレゾルビンをワイルドマウスの早産モデルに静脈注射したところ早産が予防されることが分かった。以上より、ω3脂肪酸が早産を予防し、その代謝産物レゾルビンが新規早産予防薬となることが示唆された。
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Sci Rep
巻: 3 ページ: 3113
10.1038/srep03113