研究課題
【背景】子宮内膜症は慢性の炎症性疾患である。IL-1βは子宮内膜症の炎症反応を増悪させるサイトカインとして知られている。Tryptophan 2,3-dioxygenase(TDO)はトリプトファン代謝の第一段階としてL-tryptophanをN-formylkynurenineに転換し、その結果L-kynurenineが産生される。【目的】子宮内膜症の病態におけるIL-1βの意義を、トリプトファン代謝の側面より検討した。【方法】患者の文書同意の下、以下の実験を行った。子宮内膜症組織よりESCを分離培養した。ESCに各種濃度のIL-1βを添加した後に、TDOとIDOのmRNA発現をRT-PCRで測定し、TDOとIDOの酵素活性を評価するために上清中のkynurenine濃度を測定した。ESCにTDO siRNAをトランスフェクションさせた後、同様の実験を行った。【結果】IL-1βは著明にTDO mRNAを増加させた。一方、IDOmRNAの増加はわずかであった。48時間までのkynurenine濃度を経時的に測定したところ、IL-1β(1 ng/ml)は経時的にkynurenine濃度を増加させ48時間後には約2.5倍まで増加させた。TDO siRNAトランスフェクションはIL-1βによるTDO mRNA発現とkynurenine濃度増加を有意に抑制した。【考察】IL-1βは炎症反応を増悪させるだけではなく、ESCでのTDOの産生を促進してトリプトファン代謝を亢進することが示唆された。その結果、局所でのT細胞増殖が低下し、子宮内膜症の免疫応答からの回避などが起こっているのかも知れない。
2: おおむね順調に進展している
一定の研究成果が得られている。
これまでの経過を踏まえ、さらなる発展を目指す。
in vitro, in vivo の実験に用いる。
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Fertil Steril
巻: 98 ページ: 1218-24
10.1016/j.fertnstert.2012.07.1117
Hum Reprod
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