研究課題/領域番号 |
23592397
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
西島 浩二 福井大学, 医学部, 助教 (80334837)
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キーワード | 肺サーファクタント / 胎脂 / ミセル / 消化管成熟 / 壊死性腸炎 / 超低出生体重児 |
研究概要 |
【緒言】肺サーファクタント製剤(サーファクテン, 田辺三菱製薬株式会社)とヒト胎脂を用いて作成したサーファクテンミセル溶液が、ウサギ胎仔の小腸上皮に直接的に作用する可能性が示唆された。また、これまでの研究では、その作用は小腸に吸収されて起きるのではなく、小腸上皮を覆うことによってもたらされると推測された。 【方法】1. サーファクテンミセル溶液の体内動態をさらに検証するために、肺サーファクタントミセルを簡略化した構造を持つPKH26標識リポソームに金コロイド粒子(Gold Colloid, 5nm, British BioCell International, Ltd.)を結合させた金コロイドリポソームを作成し、妊娠ウサギへの投与実験を行った。妊娠25日目のウサギ羊水腔内にミニ浸透圧ポンプを留置し、一定流速で金コロイドリポソームを投与した。5日目に胎仔小腸と肝臓を取り出し検討に供した。小腸と肝臓の各組織標本を作製し、蛍光顕微鏡と電子顕微鏡を用いて観察した。2. 妊娠末期ウサギ羊水中のリン脂質濃度と比較して100倍程度高濃度となるように調整した金コロイドリポソーム溶液を用いて、同様の検討を行った。 【結果】1. 羊水中に投与された金コロイドリポソームは、小腸上皮の微絨毛に付着した後、ファゴサイトーシスによって腸上皮細胞に取り込まれた。しかしながら、胎仔肝臓組織内で金コロイドリポソームを検出することは出来なかった。2. 高濃度金コロイドリポソームは、胎仔肝臓組織内で蛍光顕微鏡により観察された。 【考察】羊水腔に投与された金コロイドリポソームは、胎仔に嚥下された後に小腸から吸収された。ヒト羊水中に存在する肺サーファクタントと胎脂もまた、胎児に嚥下された後に小腸に到達し、消化管の成熟あるいは保護に関与すると推測する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RI試薬よりも取扱いが容易である蛍光標識試薬と金コロイド粒子を用いた実験方法を採用した。申請書に記載した方法とは異なるが、肺サーファクタントミセル溶液の体内動態を検討するという当初の目的はおおむね達成された。
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今後の研究の推進方策 |
サーファクテンミセル溶液の新生児壊死性腸炎予防効果の検討:新生児壊死性腸炎ラットモデルを作成し、サーファクテンミセル溶液の壊死性腸炎予防効果を検討する。1. 新生児壊死性腸炎動物モデルの作成:出生直後のラット新生仔を、37℃の新生児用インキュベーターに移動させる。新生仔の状態が安定しているのを確認した後に、明治LW(明治乳業株式会社)とPETS OWN PUPPY MILK (CONNEX UNITED PROCESSORS) を用いて調整した人工乳0.2 mLを1日3回経腸投与する。95%CO2に5分間、4℃の寒冷刺激に5分間、97%O2に5分間暴露させる(1日2回)。実験開始4日目に、新生仔を安楽死させる。2. 実験デザイン:60匹のラット新生仔を以下の3群に振り分ける:NEC群(壊死性腸炎群), NEC+STA群(サーファクテンミセル溶液を投与した後に、壊死性腸炎を起こさせる群), control群(母ラットの授乳を自由に受ける群)。各新生仔の体重の増減を、毎日記録する。1) 壊死性腸炎負荷:NEC群とNEC+STA群のラット新生仔を、出生直後に37℃のインキュベーターに移動させる。NEC群には、1.で示した負荷を加える。NEC+STA群には、サーファクテンミセル溶液を投与した後に、1.で示した負荷を加える。実験開始4日目に、全ての新生仔を安楽死させ、壊死性腸炎の所見の有無を観察する。さらに、回腸末端を2cm摘出し、以下の検討に供する。2) 組織学的検討ならびにアポトーシスの評価:摘出検体にHE染色を行い、組織学的に検討する。また、TUNEL染色を施し、アポトーシスに陥った細胞の有無を調べる。各群の有意差検定には、Kruskal-Walis分散分析、Mann-Whitney U検定を用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
汎用試薬 妊娠ウサギ:10羽、妊娠ラット:15匹 国内旅費:第49回日本周産期・新生児医学会学術集会 国外旅費:XI World Congress of Perinatal Medicine
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