研究概要 |
【緒言】これまでの研究により、羊水中に存在する肺サーファクタントと胎脂は、胎児の小腸上皮に直接的に作用し、消化管の成熟あるいは保護に関与している可能性が示唆された。 【方法】消化管の未熟性に加えて様々な周産期ストレスで発症する壊死性腸炎に着目した。(1)Guvenらの手法 (J Pediatr Surg. 2009) を用いて、ラット新生仔に壊死性腸炎を発症させた。ラットに加えた負荷は次の通りである。① 明治LW (明治乳業株式会社) を用いて調整した高浸透圧・高カロリーの人工乳0.2 mLを1日3回経腸投与した。② 1日2回5分間ずつ、4℃の寒冷刺激, 95% CO2, 97% O2環境に暴露した。(2)肺サーファクタント製剤 (サーファクテン; 田辺三菱製薬株式会社) とヒト胎脂を用いて作成したサーファクテンミセル溶液を用いて壊死性腸炎の予防効果を検討した。壊死性腸炎の肉眼的、組織学的重症度の評価は、Caplanのスコア (Gastroenterology. 1999) を用いて行った。また、摘出検体にTUNEL染色を施し、アポトーシスインデックスを評価した。 【結果】サーファクテンミセル溶液の投与により、ラット新生仔の生存率は、28%から58%へと改善した。肉眼的ならびに組織学的重症度スコアも有意に改善した。アポトーシスインデックスの解析結果から、サーファクテンミセル溶液は、アポトーシスの抑制を介して壊死性腸炎に対する予防効果を示すと考えられた。 【考察】我々が作成したサーファクテンミセル溶液は、ラット新生仔の壊死性腸炎に対する予防効果を示した。本研究を進めることで、新たな視点に立った壊死性腸炎予防法の確立が期待される。
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