2012 年度実施状況報告書

体細胞核移植技術の臨床応用の実現へ向けた系統的・基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号	23592398
研究機関	山梨大学
研究代表者	平田修司山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (00228785)
研究分担者	深澤宏子山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (60362068) 正田朋子山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (50345716)
キーワード	体細胞核移植胚 / ntES 細胞 / 成熟培養 (IVM) / 凍結除核卵
研究概要	体細胞核移植胚 (体細胞クローン胚) 由来の胚性幹細胞 (ntES 細胞) は、患者自身の体細胞から樹立する ES 細胞であり、それを用いた移植医療の開発が期待されている。しかしながら、臨床応用目的でのヒト ntES 細胞の樹立には、1. 多数の未受精卵の準備を可能とするシステムの確立、2. 体細胞核移植胚の発生率を劇的な改善、3. 倫理的問題ならびに社会的問題の解決、などが必要である。本研究は、このうち 1. と 2. を目指して、(1) 未熟卵子の体外成熟 (IVM) による未受精卵子の作出、(2) 除核未受精卵子の凍結保存、(3) 体細胞核移植胚の作成に用いる核のドナー体細胞の検討、(4) 体細胞核移植胚の初期発生の飛躍的改善、の 4 つの課題についての研究を行うものである。本年度は、まず、平成 23 年度に引き続いて (1) についての研究を行った。すなわち、マウスをモデル動物として、雌獣の卵巣より GV 卵を単離し、成熟培養 (IVM) して得られた MII 卵の紡錘体を除去 (除核) した後、体細胞 (卵丘細胞) の核を移植して再構築胚を得た。この再構築胚由来の ntES 細胞を樹立した。さらに (2) の除核未受精卵子の凍結保存についての検討を行った。すなわち、除核した MII 卵を vitrification 法にて凍結し、液体窒素中にて保存後に解凍した。この凍結-融解除核卵に卵丘細胞核を核移植して再構築胚を作出し、偽妊娠マウスに胚移植した。その結果、非凍結の除核卵に比して約 1/10 程度ではあるものの、産仔の作出が可能であることが明らかになった。以上の成績から、ヒトにおいて、卵巣の手術検体より未熟卵を採取し、 IVM 後に除核して凍結保存し、それを必要に応じて解凍して体細胞核移植に用いることができる可能性が拓かれた。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 2: おおむね順調に進展している理由本研究は、(1) 未熟卵子の体外成熟 (IVM) による未受精卵子の作出、(2) 除核未受精卵子の凍結保存、(3) 体細胞核移植胚の作成に用いる核のドナー体細胞の検討、(4) 体細胞核移植胚の初期発生の飛躍的改善、の 4 課題から構成される。本研究の目標達成のためには (1) の課題がもっとも重要であるので、平成 23 年度と 24 年度は、(1) の課題に集中した。加えて、また、平成 24 年度は、(2) の課題に着手し、成果を得ることができた。この (2) は、将来的にヒトの手術時に摘出せざるを得なかった卵巣から、未熟卵子を単離・IVM して、除核の後に凍結保存しておき、必要時に体細胞核移植に用いることを展望したものである。これら (1) ならびに (2) の課題については当初の計画よりも早いペースで進展している。他方、課題 (3) ならびに (4) については、(1) ならびに (2) に研究を集中したために平成 25 年度年度に着手することとした。したがって、この点については研究計画よりもやや遅れている。しかしながら、前述のように、本研究の目標達成のための主要な課題である (1) ならびに (2) が順調かつ予想以上に進展しているので、総体としては「おおむね順調に経過している」と自己評価し得る。
今後の研究の推進方策	体細胞核移植技術は発展途上の技術であり、体細胞核移植胚の初期発生率は未だ低い。したがって、本研究の遂行にあたっては、多数の未受精卵を準備し、他数回の体細胞核移植によって、多くの再構築胚を作出する必要がある。また、作出した再構築胚ならびに、それに由来する ntES 細胞の正常性や多能性の解析の目的で、多くの再構築胚の偽妊娠マウスへの移植や、キメラマウスの作出実験が必要である。したがって、平成 25 年度の研究費の大部分は、マウスの購入費、培養液、ES 細胞の維持・分化用の試薬、ならびに、体細胞核移植用の消耗品費に充当する。さらに、これまでの成果を学会において発表・討議するために、一部、旅費に充当する。なお、体細胞核移植実験の遂行に必要な実験設備は申請者らの研究室に完備しているので、平成 25 年度の研究費においては設備備品を購入しない。
次年度の研究費の使用計画	該当なし