研究課題/領域番号 |
23592398
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
平田 修司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (00228785)
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研究分担者 |
深澤 宏子 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (60362068)
正田 朋子 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (50345716)
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キーワード | 体細胞核移植胚 / ドナー体細胞 / 培養条件 |
研究概要 |
体細胞核移植胚 (体細胞クローン胚) 由来の胚性幹細胞 (nuclear transfer-derived embryonic stem cell; ntES 細胞) は、患者自身の体細胞から樹立する ES 細胞であり、それを用いた移植医療の開発が期待されている。しかしながら、臨床応用目的でのヒト ntES 細胞の樹立には、1 多数の未受精卵の準備を可能とするシステムの確立、2 体細胞核移植胚の発生率を劇的な改善、3 倫理的問題ならびに社会的問題の解決、などが必要である。 本研究は、このうち 1 と 2 を目指して、(1) 未熟卵子の体外成熟 (IVM) による未受精卵子の作出、(2) 除核未受精卵子の凍結保存、(3) 体細胞核移植胚の作成に用いる核のドナー体細胞の検討、(4) 体細胞核移植胚の初期発生の飛躍的改善、の 4 つの課題についての研究を行ってきた。平成 25 年度は、(3) ならびに (4) の検討を集中的に行った。すなわち、マウス MII 卵の紡錘体を除去 (除核) したのち、様々な体細胞の核を移植して再構築胚を作出し、この再構築胚を様々な培養条件下 (HDACi などのエピジェネーシスの調節因子を含む) で初期発生させて、胚盤胞期杯への到達率を検討した。しかしながら、研究の遂行過程において、ドナー体細胞の種類や培養条件の検討が極めて困難であった。これは、研究者らの体細胞核移植技術が (クローンマウス個体の作出が可能なレベルではあるものの) これらの検討を安定的に行うにはまだ技術水準が不足していることによるものと思われた。そこで、年度の後半には、これらの検討を一旦休止し、 体細胞核移植技術の向上の作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述のように、平成 25 年度の研究では、ntES 細胞の発生率を劇的に改善することを目的とした検討に集中した。具体的には、様々な核のドナー細胞を検討するとともに、様々なエピジェネーシスの調節因子を含む培養条件を検討した。しかしながら、年度前半の成績は、極めて不安定で再現性に欠けるものであった。このことは、私たち研究者の体細胞核移植技術の水準が、クローンマウス個体の作出が可能なレベルではあるものの、様々な条件を安定的に検討するには、決定的に不足していることが主因であると考えられた。そこで、平成 25 年度の後半には、上記の研究を行いながらも、主に体細胞核移植技術の向上の作業を行った。このために、本年度の研究の達成状況は、当初の計画よりも概ね 8 か月の間、遅延している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成 26 年 1 月に、学術振興会理事長宛に、上記の事情についての説明を含めて研究 (事業) 期間の 8 か月間の延長を申請し、承認をいただいた。 したがって、 上述した平成 25 年度の研究課題を平成 26 年 11 月まで継続的に遂行し、平成 23 年度ならびに 24 年度に得られてた成果と併せ、ヒトにおいて、「卵巣の手術検体より未熟卵を採取し、それを IVM 後に体細胞核移植に用いる」という戦略を実現するための技術的基盤を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成 25 年度は、体細胞移植胚の初期発生の飛躍的改善に関する研究に集中した。しかしながら、研究開始後の検討では、得られる成績が安定せず再現性に乏しかった。これは、研究者らの体細胞移植技術が、クローンマウス個体の作出が可能なレベルではあるものの、より詳細な胚発生の条件設定を行うには不足していることが主たる原因であると考えた。そこで、まず、体細胞移植技術の向上に努めたため、研究の遂行に概ね 8 か月程度の遅延が生じた。 平成 25 年度の研究計画を 8 か月遅延させて、当初計画のとおりの研究を遂行する。具体的には、マイクロマニピュレーション用消耗品 200 千円、実験動物購入費ならびに飼育費 500 千円、細胞培養用消耗品 200 千円、論文作成ならびに学会発表費 100 千円、等である。
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