研究課題/領域番号 |
23592399
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
田村 直顕 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (90402370)
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研究分担者 |
金山 尚裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70204550)
杉原 一廣 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (00265878)
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キーワード | 着床 / 子宮内膜 / トロフォブラスト / hCG / トロフィニン / MUC1 |
研究概要 |
妊娠成立には、胚側の因子のみならず、胚を受容する子宮内膜の環境、胚と子宮内膜の相互作用など着床に関わる因子が重要である。着床時、トロフォブラストと子宮内膜細胞に同期的に発現するトロフィニンは、互いに結合して細胞間接着を形成するとともに、トロフォブラストの活性化、子宮内膜細胞のアポトーシスを誘導する働きがある。これまでの基礎的検討により、ヒト絨毛性ゴナドトピン(hCG)が子宮内膜上皮細胞においてMUC1やトロフィニンの発現を調節することが明らかとなった。本研究では、子宮内膜局所におけhCGの作用を中心に、ヒト胚着床部位決定に関わる胚-子宮内膜-子宮のクロストークの分子調節機構を解明することを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度までに、子宮内膜上皮細胞株のうち、Ishikawa cell, SNGM cellにおいて、トロフィニン、hCGの受容体であるLHCGRの発現を確認した。これらの子宮内膜細胞株においてhCG (100 U/ml)刺激を行ったところ、Ishikawa cellでトロフィニン発現の上昇、MUC1発現の減少を認めた。興味深いことに、MUC1とトロフィニンの発現の相互作用を確認するために、Ishikawa cellにCore1-beta 3GlcNAcTとLSSTを遺伝子導入しMECA79を強制発現させたところ、本細胞では、トロフィニン抗体による免疫反応とトロフィニン結合ペプチドであるGWRQペプチドの結合が低下していた。 hCG刺激下のトロフィニン発現誘導について検討したが、従来知られているLH受容体シグナルであるcAMP/PKAを選択的阻害剤のH-89で阻害した系およびLH受容体のノックダウンした系でも、トロフィニンの発現の有意な低下を認めなかったことから、hCGがLH受容体のみを介してトロフィニン発現を調整している可能性は低いものと考えられた。新規hCG結合蛋白の同定のため、免疫沈降を応用し、抗hCG抗体+リコンビナントhCG+細胞抽出液の沈降物をSDS-PAGEして出現したバンドをプロテオミクスにより解析しているが、今のところ有意な蛋白は同定されていない。 トロフィニンを安定的に発現させる条件として、従来のhCGに加えて至適濃度のエストラジオール、プロゲステロンの付加が必要であることが明らかになった。この条件下のIshikawa cellを用いてHuman kinome library: Target 704 genes siRNAライブラリーにてスクリーニングを行ったが、発現を有意に減少させる蛋白の同定には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
子宮内膜細胞にhCGの受容体となりうる新規タンパク質が存在する可能性があり、この同定のための実験を遂行する。また子宮内膜細胞におけるトロフィニンの細胞内結合蛋白を同定するために、トロフィニンの細胞内ペプチドを合成し、免疫沈降とプロテオミクスを応用して実験を行う。 RNAiスクリーニングの過程で、Trophinin siRNAの中でトロフィニンのノックダウン効果が低いものがあり、トロフィニン自体にバリアントが存在する可能性が示唆される。生体内においてもトロフィニンにいくつかのバリアントが存在し、互いにドミナントネガティブに作用しあっている可能性がある。したがって、バリアントを同定するためにインフォームドコンセント得た症例(良性疾患で子宮全摘された症例)の子宮内膜組織においてトロフィニン遺伝子のシークエンス解析を行う必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養系、遺伝子及びタンパク実験のための試薬などの消耗品の購入費用、情報収集のための学会出張費用、論文投稿時の費用などに研究費を使用する予定である。
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