研究課題/領域番号 |
23592401
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
筒井 建紀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00294075)
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研究分担者 |
香山 晋輔 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30528005)
中村 仁美 大阪大学, 医学部附属病院, 特任臨床検査技師 (80467571)
熊澤 惠一 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教 (90444546)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧症候群 / 着床障害 / 不妊症 / TIMP |
研究概要 |
不妊治療において、着床障害による不妊症に対する治療法は確立されていない。また、妊娠高血圧症候群は、妊娠合併症の中で、母児双方の生命予後を脅かすきわめて重篤な疾患である。 私たちは、これらの諸問題に取り組むため、Tissue inhibitors of matrix metalloproteases (TIMPs)に注目し、TIMP-3をマウス着床期子宮内膜に高発現させると、妊娠高血圧症候群が発症すること、TIMP-2をマウス着床期胎盤に高発現させると、胚の着床率が上昇することに注目し、着床現象を細胞生物学的・分子生物学的に解明することを目的に研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TIMP-3を発現ベクターpcDNA3にサブクローニングし、pcDNA3-TIMP-3/HVJ-E ベクター (GenomONETM-Neo、石原産業(株))懸濁液として、胎盤形成期にあたる交配後6.5日目のICRマウス(8-12週齢)の子宮に導入した。子宮脱落膜において、交配7.5日目にTIMP-3の発現を認め、それによりMMP9の発現の減弱を認めた。さらに、TIMP-3遺伝子導入マウスは、コントロールと比較し、交配後14.5日目以降、収縮期血圧の有意な上昇を認めた。 我々はこのマウスが、純粋型妊娠高血圧症候群の解析のためのモデルになりうると考え、妊娠高血圧症候群に対する治療法の開発に取り組みたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
pcDNA3-TIMP-3/HVJ-E ベクター (GenomONETM-Neo、石原産業(株))懸濁液を作製し、交配後6.5日目のICRマウス(8-12週齢)の子宮に導入して作製した妊娠高血圧症候群モデルマウスを用いて、妊娠中の血圧、血中soluble VEGF receptor-1(sFlt-1)、尿アルブミン/クレアチニン比、胎児数、胎児出生児数、胎盤重量、子宮脱落膜の胎盤付着部位及び腎臓の病理所見を、それぞれコントロールマウス(pcDNA3/HVJ-E ベクター懸濁液を子宮に導入したマウス)のものと比較して、純粋型妊娠高血圧症候群のモデルとなりうるかを詳細に検討するとともに、妊娠高血圧症候群に対する治療法の開発に取り組みたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
正常妊娠経過において、TIMP3が交配後10.5日目に子宮脱落膜に誘導されてくるメカニズムを検討する。すなわち、交配後7.5日目、10.5日目、13.5日目の正常妊娠マウスの子宮脱落膜及び胎盤のRNAを用いてマイクロアレイ解析を行ない、正常妊娠経過中の子宮脱落膜及び胎盤の遺伝子発現量の変化を病態変化と照らし合わせつつ、TIMP3の発現制御に関わる分子を絞り込む。 正常妊娠子宮脱落膜にTIMP-3と同様に強い発現が認められるTIMP-1を用いて子宮局所への一過性遺伝子導入実験を行なう。これにより、TIMPsが妊娠高血圧症候群の発症・成因に関わっているとすれば、どのサブタイプのTIMP遺伝子が、最も関連するのかを検討する。また、TIMP遺伝子の発現制御において、サブタイプ間でのredundancyがあるかどうかについても合わせて検討する。 さらに、TIMP-2遺伝子導入を行ったマウス胚盤胞には、胎盤特異的なTIMP-2遺伝子導入が確認できた。さらにTIMP-2遺伝子を絨毛細胞に導入したマウス胚盤胞と、コントロール遺伝子を導入した胚盤胞をそれぞれ偽妊娠マウス子宮に同数ずつ胚移植し、産仔数を比較する。TIMP-2遺伝子の着床部位の発現パターンを確認し、着床部位における他のMMPs/TIMPsサブタイプの発現プロフィールを免疫組織学的に検討し、TIMP-2の着床における役割を詳細に検討する。 今後の研究費は、以上の研究をすすめるために使用する予定である。
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