研究課題/領域番号 |
23592402
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金川 武司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40346218)
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研究分担者 |
冨松 拓治 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30346209)
味村 和哉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50437422)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 1.新生児低酸素性虚血性脳障害 / 神経再生 / 間葉系幹細胞 / 胎児付属物 / preconditioning / カフェイン / HIF-1α / NF-κB |
研究概要 |
周産期脳障害は未だ大きな問題点として残されている。今までに、われわれの研究グループは、周産期脳障害に対して有効な治療法を模索し、低体温療法をわれわれが過去に報告した。しかし、これは脳障害の進行を抑えるための治療法であって、一旦完成してしまった脳障害に対しては無力であった。そこで、われわれは新しい治療法として、神経再生による脳障害治療法を模索した。その神経再生の中核をなす神経幹細胞の源として胎児付属物(胎盤、臍帯、羊膜)における間葉系幹細胞の利用を試みた。 本年は、周産期脳障害に対して、耐性をつけるべく前治療(preconditioning)についてカフェインを用いて研究をした。新生仔ラットを用いて、preconditioning群として、日齢4~6日にカフェイン25mg/kg、50mg/kgを投与し、ヒト正期産に相当する日齢7日目に左総頚動脈を露出・結紮し、ラットを8%酸素・環境温37℃のチャンバー内に収容し、低酸素負荷を課すことにより新生児低酸素性虚血性脳障害モデルを作成した。また、sham群として、日齢4~6日に生理食塩水のみ腹腔内投与する群も作成し、比較した。結果は、preconditioning群の脳障害は軽微で、sham群と比較して、脳障害を56%軽減できた。また、このpreconditioningのメカニズムを解明すべく、preconditioning群とsham群において、日齢7日目において、HIF-1αおよびNF-κBのタンパク発現量をウエスタンブロッティングにて解析した。これにより、preconditioning群は有意にNF-κB のタンパク量が増加していいた。このことは、NF-κBが関与していることが解明された。この新規発見については、論文作成し、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提出した研究計画・方法に示したように、新生児低酸素性虚血性脳障害の研究に従事していた研究分担者により協力しつつ行ってきた。大学院生が3人所属し、新たに、新生児低酸素性虚血性脳障害に関する研究を始めた。この研究を行うに当たり、新生児低酸素性虚血性脳障害モデルが安定して作成できることが前提ある。よって、モデル作成に慣れる必要性があったが、長年臨床に従事し手術経験も豊富であったため、すぐに安定したモデル系が得られた。その結果、上記実績概要に示したとおり、カフェインによるpreconditioningが新生仔脳障害が軽減することが証明できた。この研究には、安定したモデルを作成できることが真実を解明する第一歩である。その点において、この1年でまず安定したモデル作成が供給できる体制になったことは、おおむね順調に研究計画が進んでいるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新生仔GFPトランスジェニックラットから胎仔血由来間葉系幹細胞の採取および新生児低酸素性虚血性脳障害モデルへの移植を行い、組織学的に最も神経細胞を誘導できる投与時期、投与方法、神経栄養因子や血管増殖因子の関与を解析する。 すなわち、胎仔GFPトランスジェニックラットの静脈血を用いる。間葉系幹細胞の分離・培養については、FACS(フローサイトメトリー)を用いて、間葉系幹細胞とされるCD34陽性細胞を分離・採取および培養する。先ほどの新生仔ラット低酸素性虚血性脳障害モデルの作成し、このモデルに、上記で得られた胎仔血由来間葉系幹細胞を脳室内投与、腹腔内投与、静脈(心腔)内投与の群に分けて投与し、比較検討する。また、insult後1日目、3日目、5日目、7日目、14日目、28日目の6つの群に分けて胎仔血由来間葉系幹細胞の投与を行い、より誘導される投与時期について検討する。そして、最も有効に神経細胞に誘導できた投与方法・投与時期で、神経増殖・栄養因子として知られるFGF-2、EGF、BDNF、Wnt蛋白を同時に投与し、効果について検討する。また、血管増殖因子として知られるVEGF、PLGFの効果について検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記実験・研究を推し進めるに当たり、昨年同様 新生児低酸素性虚血性脳障害モデルとなるWisterラットの飼育費用およびGFPトランスジェニックラットの購入のための費用が必要となる。基本となる研究費として上記が使用される予定である。また、FACSについては、当大学共同研究室にあるものを使用する。投与方法の検討に関しては、脳室内投与にて脳固定装置が必要であるが、これについては現在あるものを利用する。また、神経増殖・栄養因子の検討で、FGF-2、EGF、BDNF、Wnt蛋白の測定が必要になってくる。これらの抗体を研究費からの購入予定である。
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