研究課題/領域番号 |
23592402
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金川 武司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40346218)
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研究分担者 |
冨松 拓治 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (30346209)
味村 和哉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50437422)
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キーワード | 新生児低酸素性虚血性脳障害 / 神経再生 / 間葉系幹細胞 / 胎児付属物 / preconditioning / カフェイン / NF-κB / IMD-0354 |
研究概要 |
周産期脳障害は未だ大きな問題点として残されている。今までに、われわれの研究グループは、周産期脳障害に対して有効な治療法を模索し、低体温療法をわれわれが過去に報告した。しかし、これは脳障害の進行を抑えるための治療法であって、一旦完成してしまった脳障害に対しては無力であった。そこで、われわれは新しい治療法として、神経再生による脳障害治療法を模索した。その神経再生の中核をなす神経幹細胞の源として胎児付属物(胎盤、臍帯、羊膜)における間葉系幹細胞の利用を試みた。 昨年は、周産期脳障害に対して耐性をつけるべく前治療(preconditioning)についてカフェインを用いて研究をし、新生仔低酸素性虚血性ラットモデルを用いて、日齢4~6日にカフェイン25mg/kg、50mg/kg、PBS(コントロール)を事前投与し、カフェイン事前投与群において脳障害を56%軽減できた。カフェイン事前投与群は、コントロールに比較して、NF-κBの上昇認め、またNF-κBの阻害薬であるIMD-0354の投与により脳保護効果が消失した。つまり、この脳保護効果は、NF-κBによりもたらされていることが証明された。この新規発見については、論文作成し、Medical Journal of Osaka Universityに採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
周産期脳障害は未だ大きな問題点として残されている。今までに、われわれの研究グループは、周産期脳障害に対して有効な治療法を模索し、低体温療法をわれわれが過去に報告した。しかし、これは脳障害の進行を抑えるための治療法であって、一旦完成してしまった脳障害に対しては無力であった。そこで、われわれは新しい治療法として、神経再生による脳障害治療法を模索した。その神経再生の中核をなす神経幹細胞の源として胎児付属物(胎盤、臍帯、羊膜)における間葉系幹細胞の利用を試みた。 昨年は、周産期脳障害に対して耐性をつけるべく前治療(preconditioning)についてカフェインを用いて研究をし、新生仔低酸素性虚血性ラットモデルを用いて、日齢4~6日にカフェイン25mg/kg、50mg/kg、PBS(コントロール)を事前投与し、カフェイン事前投与群において脳障害を56%軽減できた。カフェイン事前投与群は、コントロールに比較して、NF-κBの上昇認め、またNF-κBの阻害薬であるIMD-0354の投与により脳保護効果が消失した。つまり、この脳保護効果は、NF-κBによりもたらされていることが証明された。この新規発見については、論文作成し、Medical Journal of Osaka Universityに採択された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、カフェイン脳保護モデルに新生仔GFPトランスジェニックラットから胎仔血由来間葉系幹細胞の採取およびカフェイン脳保護モデルの移植を行い、さらに組織学的に最も神経細胞を誘導できる投与時期、投与方法、神経栄養因子や血管増殖因子の関与を解析する。 すなわち、胎仔GFPトランスジェニックラットの静脈血を用いる。間葉系幹細胞の分離・培養については、FACS(フローサイトメトリー)を用いて、間葉系幹細胞とされるCD34陽性細胞を分離・採取および培養する。先ほどのカフェイン脳保護モデルの作成し、このモデルに、上記で得られた胎仔血由来間葉系幹細胞を脳室内投与、腹腔内投与、静脈(心腔)内投与の群に分けて投与し、比較検討する。また、insult後1日目、3日目、5日目、7日目、14日目、28日目の6つの群に分けて胎仔血由来間葉系幹細胞の投与を行い、より誘導される投与時期について検討する。そして、最も有効に神経細胞に誘導できた投与方法・投与時期で、神経増殖・栄養因子として知られるFGF-2、EGF、BDNF、Wnt蛋白を同時に投与し、効果について検討する。また、血管増殖因子として知られるVEGF、PLGFの効果について検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究を行うにあたり、モデルの飼育・維持費 およびGFPトランスジェニックラットの購入費が必要となる。他、モデルを作成するための器具および麻酔について昨年購入したものを引き続き使用する。また、FACSについては、当大学共同研究室にあるものを使用する。また、神経増殖・栄養因子の検討で、FGF-2、EGF、BDNF、Wnt蛋白の測定が必要になってくる。これらの抗体を研究費からの購入予定である。
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