研究課題/領域番号 |
23592405
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
浅野間 和夫 九州大学, 大学病院, 助教 (30380413)
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研究分担者 |
福嶋 恒太郎 九州大学, 大学病院, 講師 (40304779)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
昨年度の平成23年度、我々はSatb1/2が胎盤栄養膜細胞の分化を抑制し、未分化維持に必須であることを論文発表した。その際、Satb1/2の制御する遺伝子としてEomesodermin(Eomes)を同定し、転写制御の詳細な機構を解明し、論文発表を行った(Asanoma et al., 2012)。研究申請書に記したようにSatb1/2は多数の遺伝子を同時に制御することが予想されるため本年度はSatb1/2が制御する遺伝子群を探ることとした。栄養膜幹細胞の分化を制御する遺伝子としてEomesと並んで知られているId1、Id2、Gata3について探った。ゲルシフト解析やクロマチン免疫沈降法により、Satb1/2はId1、Id2、Gata3のいずれについてもその転写制御領域に結合することが分かった。またレポーター解析によってSatb1/2がId1、Id2、Gata3の転写を制御することを見出した。 一方で我々は、ダイオキシン受容体(AHR)の転写が一塩基多型依存的に制御されることを見出し、この制御に癌抑制遺伝子である転写因子NF1Cが関わることを発見した。NF1CはAHRのプロモーター領域にある一塩基多型部位(rs10249788: C/T)に結合しAHRの転写を抑制するが、この結合と転写抑制能はrs10249788がCアリルの場合、Tアリルに比べて強力であった。AHRは子宮体癌細胞の増殖、浸潤、運動能などの悪性形質を促進し、NF1Cはこれを抑制した。遺伝子型解析により進行子宮体癌患者がrs10249788にT/Tが持つ頻度が多いことを見出した。T/Tの遺伝子型はAHRの発現を上昇させ、癌の進展に有利に働いていると結論付けた。以上の結果を論文発表した(Li et al., 2012; Corresponding authorを担当)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度にSatb1/2がEomesを標的とすることを見出し、論文発表に至った。その後の方針としてSatb1/2が標的とする遺伝子群を全ゲノム的に調べることを目標と掲げた。しかしアッセイのシステムがうまく機能せず、この方向性が頓挫している。しかしその間、我々はSatb1/2の結合領域をId1、Id2、Gata3に見出し、実際にこれらの遺伝子がSatb1/2により制御されていることを確認することができた。我々は達成度を上記のように評価した。 他方で我々はダイオキシン受容体を中心とするプロジェクトにおいて国際雑誌に論文掲載に至り大きな成果を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
我々はSatb1/2が標的とする遺伝子群を全ゲノム的に調べることを目標と掲げた。しかしアッセイのシステムがうまく機能せず、この方向性が一旦頓挫している。この原因を探って当初の予定を遂行するとともに米国共同研究者との協力を強化し課題の完成を目指す。 具体的にはHA標識したSatb1/2をマウスの胎盤幹細胞に遺伝子導入し、抗HA抗体を用いたクロマチン免疫沈降法と次世代シークエンサーを組み合わせたChIP-Sequence法により全ゲノム規模でSatb1/2の標的領域を探索する。得られたSatb1/2標的領域が制御すると予想される遺伝子を同定する。標的遺伝子候補についてはゲルシフトアッセイを用いてSatb1/2の結合を確認し、さらにSatb1/2による制御をレポーター解析により確認する。また、同定した標的遺伝子が栄養膜細胞の分化においてどのように機能するか解析する。すなわちマウス栄養膜幹細胞に遺伝子導入し過剰発現系やノックダウンを用いて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
クロマチン免疫沈降法-次世代シークエンス解析(ChIP-Sequence)を行う。次世代シークエンサーにSatb1導入、Satb2導入の二種類のサンプルをかける。1検体400千円で合計800千円となる。抗体、レポーター解析の試薬などに100千円。血清や培地にリコンビナントFGF4を含めて100千円を使用予定。学会において研究成果を発表するとともに研究の動向を探るため100千円を使用予定。
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