研究概要 |
研究最終年度はSatb1/2の標的遺伝子の解明と機能解析を中心に行った。これまでの研究で我々はラット、マウスの栄養膜細胞株を用いた解析を行い、Satbが栄養膜細胞の分化を司る中心的な分子のひとつであるEomesの転写調節に関わることを証明した(Asanoma et al., 2012)。その後の個々の解析により、Satbがその他にもId2、Gata3の転写調節領域に直接結合し、転写調節に関わる未発表データを得ている。さらにSatbが制御する遺伝子群をゲノムワイドに単離することを目標として解析を試みた。我々は当初、栄養膜幹細胞モデルとして従来汎用されていたRcho-1細胞を主に用いていたがRcho-1細胞は絨毛癌由来であることから、分化機構がより明らかなマウス栄養膜幹細胞(mTSC)を用いることとした。Hemagglutinin(HA)でタグしたSatb1/2をアデノウィルスにてmTSCに遺伝子導入し、核抽出物から抗HA抗体を用いてSatb-DNA複合体の免疫沈降を試みた。米国カンザス大学医療センターMichael Soares研究室との共同研究で同解析を試みたが、mTSCを用いたクロマチン免疫沈降の段階で十分な精度の検体が得られず、この方向での解析は頓挫した。 次に当初の目標には表していなかったが子宮体癌におけるSatbの発現機能解析を開始した。正常子宮内膜と比して癌組織においてはSatb1/2のいずれの発現も上昇していた。子宮体癌細胞株についても、大部分の細胞株においてSatb1/2の豊富な発現を認めた。まず、Satb1/2の発現をIshikawa、HEC1Aの細胞株においてノックダウンしたところいずれにおいても細胞増殖の低下を認めた。今後、転移、浸潤能を中心に機能解析を進めていく予定である。 一方で我々は転写因子NF1Cが一塩基多型依存的にダイオキシン受容体の転写を制御し、子宮体癌の浸潤能を制御することを見出した(Li et al., 2013)。当研究代表者が中心的な働きを担い、corresponding authorを務めた。
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